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転勤族の妻の憂鬱「田舎暮らしが辛すぎる」と離婚を希望
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

転勤族の妻の憂鬱「田舎暮らしが辛すぎる」と離婚を希望

転勤の多い仕事に就いた場合、本人はもちろん、その家族にとっても負担は大きいものです。夫は勤務先、子どもは学校など居場所があるいっぽうで、「仕事を探すのが難しいし、せっかく友人ができても、すぐに次の土地への転勤が決まるんです」と、ある女性はその大変さについて、ネットの掲示板で吐露しました。

この女性以外にも、転勤族の妻たちの嘆きは掲示板にあふれています。「生活になじめず、将来にも展望が見えない気がして、想像以上に辛いです」、「今後ずっと主人の定年までこういう生活が続くことを考えると暗たんたる思いです」ーー。

こうした悩みから、「主人のためにも、自分のためにも離婚するのがいいと思います」とまで、考えてしまった女性もいます。「東京で生まれ育った私には、田舎暮らしが退屈で辛いんです。転勤族だとわかって結婚しましたが、転勤族の生活をなめていたのだと今になって思います。こんな理由で離婚は無理ですか?」

「田舎暮らしが辛い」という理由で、離婚は認められるのか? 高橋 善由記弁護士の解説をお届けします。

A.「婚姻を継続し難い重大な事由」となるかどうか

さすがに、「田舎暮らしが嫌だから離婚して」と言っても、夫は承諾しないでしょう。夫婦間の話し合いで離婚に至らない場合は、調停を申し立てて第三者とともに話し合いをします。それでも相手の合意が得られない場合は、裁判を起こすことになります。

裁判で離婚が認められるためには、離婚したい事情が、法律で定められた五つの離婚理由、つまり「不貞」「悪意の遺棄」「三年以上の生死不明」「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」「その他婚姻を継続し難い重大な事由」のどれかにあてはまらなければなりません。

ただ、夫が転勤族で田舎暮らしが嫌、という事情だけでは、ただちに婚姻を継続し難い重大な事由があるとは判断されないだろうと考えられます。

夫としては、本人の好むと好まざるとにかかわらず、勤務先の業務命令により、転勤せざるを得ないのが通常です。

妻としても、夫の転勤先で仕事や友人を見つけて、その土地に馴染めるように努力する、思い切って自分は馴染みの土地に残り、夫に単身赴任してもらうなど、転勤に何とか対応する余地もあるのではないでしょうか。

ご相談の内容を見る限りでは、「夫とケンカが絶えない」など夫婦間の目立ったトラブルは無いようですし、夫が転勤族というだけでは、婚姻関係が破綻して、回復の見込みがないとまではいえません。

ただ、夫が頻繁に転勤となり、転勤した先に馴染めない妻が、非常に辛い思いをすることもわかります。遠方への転勤は、それまで築いてきた人間関係や仕事、子育てなど生活全般に関する状況が大きく変わる一大事です。

しかも夫が転勤族ということは、比較的短い期間で、今までいた土地を去り、また新たな場所で一から生活を構築していかなければなりません。そんな妻に、「仕事だから仕方が無い。黙って我慢しろ」と言うのは、薄情かもしれません。

夫としては、慣れない土地で辛い思いをしている妻の状況を理解し、少しでも辛さを軽減できるようにしたり、転勤した先に馴染めるように配慮をすべきではないでしょうか。

仮に、夫が妻を全くかえりみず、何も配慮をしなかったことで、妻がより辛い思いをし、夫と妻の対立が決定的になれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる可能性があります。その場合、離婚が認められるでしょう。

ただ、そうなる前に、まずは夫の転勤問題について、夫婦間でじっくり話し合っていただきたいですね。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

高橋 善由記
高橋 善由記(たかはし よしゆき)弁護士 高橋善由記法律事務所
1972年宮城県仙台市生まれ。2002年弁護士登録(仙台弁護士会)。地元仙台で、離婚問題、交通事故等で困っている方々のサポートに力を入れており、月に30件以上の相談を受けている。

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