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2021年03月12日 22時04分

妻を抱きたくても、叶わない…結婚前の「セックスを求めない」誓約書を前に苦悶する夫

妻を抱きたくても、叶わない…結婚前の「セックスを求めない」誓約書を前に苦悶する夫
写真はイメージです(IYO / PIXTA)

妻の肌に触れ、耳元で愛をささやきたい。愛し合っている夫婦なら、そんな感情がふとわきあがるのは自然なことかもしれません。

しかし、ネット上の掲示板には、どんなに妻を抱きたいと思っても、それが叶わない男性からの嘆きの声が寄せられていました。男性は結婚前、妻の要望で、「セックスを求めたら離婚する」という誓約書を交わしたそうです。

「妻はセックスがあまり好きではなく、私も、結婚当初は必ずしもセックスは必要ではないと思っていました。でも最近、『やっぱり妻と交わりたい』『子どもが欲しい』と思うようになって…」。

男性は、妻とセックスしたいと思う一方で、約束を破ったら離婚されてしまうのではないかと思い、「毎晩悶々としている」といいます。

結婚前に交わした「セックスを求めたら離婚する」という誓約書の内容を破ることは、離婚理由になるのでしょうか。長瀬佑志弁護士の解説をお届けします。

●公序良俗に反する誓約書は「無効」と考えられ、離婚は認められない

ーー誓約書の内容を破った場合、離婚しなければならないのでしょうか。

相談者は、結婚する前に妻と、「性交渉を求めたら離婚する」という誓約書(以下『本件誓約書』といいます)を交わしたということです。

離婚が認められるかどうかは、本件誓約書が有効といえるかどうかが焦点になるでしょう。 誓約書に書かれているからといって、どんな内容であっても、裁判所が認めるわけではありません。

結論を申し上げると、本件誓約書は無効だと考えられ、約束をやぶって性交渉を求めたとしても、離婚される可能性は低いでしょう。

ーー今回のケースでは、なぜ誓約書が「無効」と考えられるのでしょうか。

相談内容から察するに、相談者の妻は、本件誓約書を交わす際「性交渉を求めたら離婚する」と伝え、相談者はそれを了承した上で誓約書にサインをしているのだと思われます。

つまり、本件誓約書は、離婚するかどうかを性交渉の有無で決める、という内容といえるでしょう。社会通念からいっても、このような契約は公序良俗に反し、無効と判断される可能性があると思われます。

本件誓約書の有効性については、参考になる裁判例があります。

ある男性が、一定金額のお金を支払えば、妻からも夫からも離婚を申し出ることができ、申し出を受けた方は協議離婚に応じなければならない、という内容の誓約書を妻と交わしました。

しかし、裁判所は、離婚という身分関係をお金の支払によって決する内容の夫婦間の誓約書は、公序良俗に反し無効と判断したのです(東京地判平成15年9月26日)。

このように、「夫が誓約書の約束を守らなかった」という理由で、妻が離婚を切り出したとしても、裁判所がその請求を認める可能性は低いでしょう。

性交渉の有無をめぐって離婚が争われる場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するか否かが問題となります。

たとえば、「妻が、特に理由もないのに夫からの性交渉の要求を拒み続ける」「妻が嫌がっているのに、夫が性行為を強要する」などの事情で、夫婦関係が破綻していると裁判所が判断した場合は、離婚請求が認められる可能性があります。

(弁護士ドットコムライフ)

取材協力弁護士

長瀬 佑志弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか
事務所URL:https://nagasesogo.com

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