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ケチすぎる夫、専業主婦の妻に「親からお金をもらって」生活費も折半させる…「経済的DV」になる?
画像はイメージです(ふじよ / PIXTA)

ケチすぎる夫、専業主婦の妻に「親からお金をもらって」生活費も折半させる…「経済的DV」になる?

浪費家よりはマシかもしれないが、それでも行き過ぎた節約は「ケチ」となる。度がすぎたケースでは、生活に支障をきたしているケースもあるようだ。

ネット掲示板「ガールズちゃんねる」には、「旦那がケチすぎる」というスレッドが立ち、投稿者が夫に対する不満をつづっていた。

投稿者は子ども(1歳)がいる専業主婦。夫は家賃は出してくれるが、光熱費は折半で、投稿者しか使わない生理用品や日用品、薬代はいっさい出さないという。投稿者は専業主婦のため、お金を「親にもらってこい」などと言われるそうだ。

投稿者が離婚について触れると、夫から「養育費、慰謝料は払わない。慰謝料に関しては逆に貰いたいくらいだ。毎日家にいて、食っちゃ寝して光熱費使いたい放題なんだから」と言われたという。

掲示板では、投稿に対して「ケチってレベルじゃない」「経済的DVでは?」という声も上がるが、夫のケチすぎる態度を理由に離婚をすることはできるのだろうか。澤藤亮介弁護士に聞いた。

●「経済的DVと認められる可能性は十分ある」

ーー投稿者の夫の行為は「経済的DV」といえますか。

経済的DVについては法律上の定義がありませんが、夫婦間の場合、一般的には、「配偶者から一方的に金銭的な自由を奪い、経済的に追い詰める行為」などと説明され、ドメスティックバイオレンスの一態様になります。

今回のケースで夫の各行為が経済的DVにあたるか否かは、離婚事件において、(1)離婚事由に該当するか、(2)離婚慰謝料(以下「慰謝料」)を発生させる不法行為を成立させるか、に関わる問題となりうると考えられます。

裁判上では、生活費をどの程度負担しなかったのか、どれくらいの期間継続されたかなどの点も考慮したうえで判断されることになるかと思われます。

投稿者のように、1歳のお子さんがいるため働くこともできない妻に対し、生活必需品の負担すらしない場合には経済的DVと認められる可能性は十分あるのではと考えられます。

ーー経済的DVは離婚事由として認められるのでしょうか。

経済的DVの程度や期間などによっては、「悪意の遺棄」又は「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして、離婚事由になる可能性はあると言えます。

●夫の言い分は簡単に認められそうにない

ーー夫に慰謝料を請求できますか。夫は「支払わない」と言っているようですが。

夫婦間の慰謝料は、一般的には婚姻継続中ではなく、離婚する際に請求することとなります。また、法的には、相手方の不法行為(たとえば、婚姻期間中の不貞行為・暴力など)によって、その婚姻関係が破綻したと認められる場合に慰謝料が発生することとなります。

今回のケースでも、夫の経済的DVと認めうる行為によって婚姻関係が破綻したと考えられるのであれば、離婚協議などに際し、慰謝料を請求すること自体は問題ないと思われます。

もっとも、夫が自身の責任を自発的に認めない場合、最終的には離婚訴訟において、妻側が夫の経済的DVを主張、立証する必要があり、裁判所が夫の不法行為の成立を認めて初めて妻の慰謝料請求が法的に認められることとなります。

ーーさらに夫は「養育費は払わない。慰謝料を貰いたいくらい」と言ってます。

養育費については、夫が任意で負担することを拒否し続けた場合、夫婦関係(離婚)調停を経た上で離婚訴訟を提起し、離婚を認容する(認める)判決が下されれば、よほどの事情がない限り、ほぼ確実に夫に養育費の支払いを命ずる判断がされるものと思われます。なお、判決時、妻が子の親権者となり、かつ、夫に一定の収入があることが前提となります。

夫から妻に対する慰謝料請求については、「毎日家にいて、食っちゃ寝すること」が不法行為に当たるとは到底言えず、妻に他の不法行為(浮気など)となり得る問題行為がない限り、認められることはないでしょう。

●生活費に困っているなら「婚姻費用分担調停」の申立てもあり得る

ーー投稿者の場合、もし離婚を選択しないとしても今後の生活費に困りそうです。

生活費に関しては、同居していても婚姻費用分担調停の申立てが可能です。この申立ては通常別居時に行われますが、別居自体を要件としていません。

実際には、夫と同居しつつ手続を行うことの困難さは想定されますが、生活費について緊急を要する場合には、婚姻費用分担調停の申立てを検討してみてもいいと思います。

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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