浮気癖のある夫をなんとかしたいと奮闘する妻たち。夫の小遣いを減らして浮気相手にお金を使えないようにする、夫に浮気のリスクを伝える、などの浮気対策をおこなう妻もいる。
中には「隠し子対策」を検討している女性もいるようだ。弁護士ドットコムにも「浮気癖のある夫に隠し子ができないようにしたい」という相談が寄せられている。
相談者は「隠し子対策」として、夫にパイプカットをしてもらうことにした。
しかし、それだけでは安心できないため、「パイプカットをすること。その後は再開通しないこと」「隠し子ができた場合は、その子どもに財産を渡さないこと」などの内容を盛り込んだ誓約書を作ることを検討しているという。
●パイプカット手術を法的に強制することはできない
そもそも、夫に法的にパイプカットを強制することはできるのだろうか。
離婚・男女問題に詳しい理崎智英弁護士は「結論から言うと、妻は夫にパイプカットの手術をするよう法的に強制することはできません」と語る。
「パイプカットの手術は、身体に直接メスを入れて、性器の一部を除去する手術です。身体に対する重大な侵害行為に該当しますので、本人の同意がない限り、そのような手術をすることはできません。
そのため、夫にパイプカットの手術をするよう求める法律上の権利は妻にはないということになります」
●隠し子に財産を渡さないことはできる?
相談者は、誓約書に「隠し子ができた場合は、その子どもに財産を渡さないこと」という内容を盛り込むことも検討している。隠し子に夫の遺産を相続する権利はあるのだろうか。
理崎弁護士は、次のように説明する。
「隠し子(配偶者以外の子)ができたとしても、夫が子を認知しなければ、法律上、その子は夫の相続人ではありません。そのため、夫が子を認知せずに亡くなった場合、夫の遺産をその子が相続することはありません。
ただし、夫が子を認知しない場合であっても、子あるいはその母親から認知の請求を受け、当該請求が認められた場合には、夫の意思とは関係なく、夫と子の親子関係が存在することになります。親子関係が認められた場合には、原則として、子は親の財産を相続する権利があります」
もし、夫が誓約書にしたがって「隠し子には相続させない」という内容の遺言をのこして亡くなった場合、その遺言は有効なのだろうか。
「親子関係が認められた場合、たとえ夫が遺言によって『子には相続させない』としたとしても、子には遺留分があります。そのため、夫の死後に子から夫の妻あるいは夫の嫡出子(妻との間の子)に対して遺留分侵害額請求を受けた場合、子に財産を全く相続させないということはできません。
なお、遺言書ではない誓約書には相続分を指定したり、相続財産を遺贈したりするといった法律上の効力はありませんので、誓約書は何ら法律上の効力は有しません」