弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 離婚・男女問題
  3. しつこいアプローチ、相手は「勘違い女ウザい」と激怒…片思いが「ストーカー」認定される時
しつこいアプローチ、相手は「勘違い女ウザい」と激怒…片思いが「ストーカー」認定される時
写真はイメージです(hanack / PIXTA)

しつこいアプローチ、相手は「勘違い女ウザい」と激怒…片思いが「ストーカー」認定される時

「オレ、ストーカーにあっているんだよね」。こう話すのは、会社員のマサトさん(仮名・50代男性)だ。

マサトさんによると、飲み屋で知り合った女性と仲良くなり、LINEを交換。その後、毎日LINEをやり取りするようになり、数回ほど食事に出かけたこともあるという。しかし、女性からの毎日のLINEを苦痛に感じるようになった。

「次はいつ会える?などとしつこくて。相手はオレと付き合いたいと思っているみたい。既読スルーするとたまに電話かかってくることもあるし。ストーカーだよ、ストーカー」とマサトさんは語る。

ブログにも「ストーカー勘違い女ウザい」「犯罪です」などと詳細に書き込んだが、女性は自分のことだとは気づいていないようだ。

女性から送られてくる毎日のLINEは多くて5通ほど。マサトさんの家の住所や勤務先は知らせていないという。

●「ストーカー」と認定してよいのか?

マサトさんは女性を「ストーカー」だと考えているが、女性は単にマサトさんに好意があり、アプローチをしている可能性もある。その場合、安易に「ストーカー」と認定してよいのだろうか。

小野智彦弁護士は、次のように説明する。

「マサトさんの例では、マサトさん本人は苦痛とは思っているものの、相手方に拒否の意思表示をしたわけでもなさそうですし、毎日のLINEは多くて5通ほど、住所や勤務先も知られていないようです。

このような事情から考えると、『身体の安全、住居等の平穏が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたもの』(ストーカー行為:『ストーカー行為等の規制等に関する法律』2条3項参照)といえるまでは至っていないと考えられます」

弁護士ドットコムにも、好意がある女性に2回ほどネットギフトを贈ったところ、「ストーカー被害を受けたとして警察に通報する」と言われた男性からの相談が寄せられている。

小野弁護士によると、この相談者についても「ストーカー行為」には至っていないと考えられるという。

「ただし、注意も必要です。『警察に通報する』と言われた以上、それを超えてまたネットギフトなどを贈るなどすれば、ストーカーに当たる可能性が高まると考えられます」。

●ネット上に詳しく書き込む行為は許される?

マサトさんは女性を「ストーカー」認定し、ブログに詳しく「被害内容」を書き込んでいる。ブログは誰でも閲覧できるが、女性は自分のことだと気づいていないようだ。

しかし、共通の友人・知人の中で女性だと気づく人もいるだろう。法的に「ストーカー」といえない場合は、女性にとっても大きな傷となる。このような行為について、小野弁護士は次のように警鐘を鳴らす。

「その女性を指して『ストーカー』とインターネット上に詳しく具体的な事実を書き込む行為は、その女性の社会的評価を低下させるものであることは間違いありません。

ただ、名誉棄損は、誰かを特定できないといけないので、その記述からその女性のことをどこまで特定できるかが問題となります。

一般的には、少なくとも対象者の属性のいくつかを知る者が見た時に認識できる程度に同定されることが必要と解されています。

インターネット上でなされた具体的表現を被害者の属性や周辺事情と照らし合わせながら、特定の人物に対する内容であることを証明されてしまうと、名誉棄損罪が成立することになります。名前を出さなければ良いというわけではないということをご注意ください」

プロフィール

小野 智彦
小野 智彦(おの ともひこ)弁護士 大本総合法律事務所
浜松市出身。1999年4月、弁護士登録。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏が漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴した事件などの代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする