「離婚慰謝料が払えません。自己破産するしかないのでしょうか」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。
相談者は、離婚時に慰謝料200万円を一括で支払うことに同意しました。しかし、支払い期限が近づくにつれ、焦りを感じています。
「一括払いに同意はしたものの、他にもローンを抱えているため、とても支払える額ではないと困っている状況です」という相談者。相手は減額交渉には応じてくれそうになく、相談者に貯金や車などの財産もありません。
このような場合、自己破産して慰謝料の支払いを免れる可能性はあるのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●「不貞行為の慰謝料」は基本的には免責される?
ーー破産手続きはどのような場合に認められるのでしょうか。
「破産申し立てをすることができるのは、債務者が『支払不能』にあるときです。そのため、破産手続きをするか否かは、債務総額と収入のほか、『免責不許可事由』(破産法252条1項各号)がないか否かを検討することになります。
破産申し立てをしても『免責不許可事由』がある場合には債務は免責されないため、借金が残ってしまいます。たとえば、ギャンブルや浪費などが『免責不許可事由』となります」
ーーもし自己破産が認められた場合、慰謝料の支払い義務も免除されるのでしょうか。
「慰謝料の発生原因にもよります。たとえば、通常の不貞行為の慰謝料は非免責債権には該当せず、基本的には免責されるとされています(東京地裁平成28年3月11日判決)。そのため、慰謝料の支払い義務は免除されることになります。
ただし『悪意(判例上、故意を超えた積極的な害意をいうとされています)』を加えた不法行為の場合は免責されないこともあります」
●方法は「自己破産」だけではない
ーー相談者がとりうる手段は自己破産のみなのでしょうか。
「相談者の場合は慰謝料以外にもローンを抱えているとのことなので、このローンについては破産ではなく、任意整理をするということも考えられます。
また、相手に一括で200万円を支払うことが難しくなったことを伝えて相談をしてみても良いと思います。減額交渉には応じてくれないとしても、条件(たとえば、総額を少し高くする、公正証書を作成する、遅延損害金をつける等)を提案すれば、分割交渉には応じてもらえるかもしれません。
債務整理の方法は自己破産だけではありません。債務額や債務の原因、人間関係等によって最適な方法を検討することが大切です」