「今までお前にかけた時間と金すべて返せよ」。交際相手の男性に別れ話を切り出したところ、このように言われたという女性が弁護士ドットコムに相談を寄せています。
相談者によると、男性との交際期間は3カ月程度。デートは月に1〜2回、ブランド品を買ってもらったり、金銭のやり取りをしたりしたことは1度もなく、相談者も交際費を出していました。
ところが相手に別れを切り出すと、「お前詐欺してるってわかってる? 俺の気持ち踏みにじってるんだぜ?」と強気に出たと思ったら、「お前がいないと無理。死にたい」などと泣きつき、精神的に不安定な「メンヘラ彼氏」になってしまったそうです。
「相手が払った金額をこちらがもつ必要はあるのでしょうか」と相談者は聞いています。そもそも、相談者の行為は「詐欺罪」にあたるといえるのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●「詐欺罪」にはあたらず、交際相手に返金する義務もなし
ーー相談者の行為は「詐欺罪」にあたるといえるのでしょうか
「結論から言えば、『詐欺罪』には該当しません。『詐欺罪』が成立するためには、法律上、(1)相手方を欺罔し、(2)錯誤に陥らせ、(3)処分行為をさせ、(4)財産または利益を移転させる、という要件が必要です。
今回のケースでは、交際状況をお伺いする限り、婚約や内縁関係という状況もありませんので、あくまでも自由恋愛です。つまり、相談者が別れることも自由です。
よって、相談者が交際相手に対して『欺く行為』をしたこともありませんし、それにより交際相手が金銭を支払ったこともありませんので、『詐欺罪』には該当しません」
ーー交際相手は「今までお前にかけた時間と金すべて返せよ」と言っているようです。相談者は交際相手が支払った金額を支払わなければならないのでしょうか
「相談者が支払う義務はありません。相談者の行為は『詐欺罪』にはあたりません。また、通常の交際関係においてデートにかかった費用は交際相手が任意に支払った金銭ですので、返金する必要はありません」
●交際相手の「別れると死ぬ」発言は「デートDV」にあたる可能性も
ーー相談者が別れ話を切り出した後も、交際相手は「死にたい」などと言ってくることがあるようです。今後はどのように対応すべきでしょうか
「本来であれば、交際相手に納得してもらい、円満に別れることが一番です。ただ、別れ話をする場合はオープンスペースでしか会わないなど、話し合いの際に相談者さんの身の安全を確保することが大切です。
また、『別れると死ぬ』というような発言は、いわゆるデートDV(精神的暴力)に該当する可能性があります。さらに交際相手から相談者に執拗に電話やメールなどがあるようであれば、ストーカー行為として警察に相談した方が良いかもしれません」