夫に風俗で働かされている——。こんな女性の悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
結婚して3年が経つが、夫はいっさい働かず、代わりに女性が風俗で働いて稼いでいるのだという。しかし、収入は夫に横取りされ、手元には「出勤に必要な金額」しか残らない状態だ。夫は家賃として支払う分も使い込み、女性が「何に使っているのか」と問いただすと、怒鳴られて暴れるため、それ以上聞くことができないそうだ。
女性は夫からDVも受けており、警察に相談しているが、病院に行くほどのケガはなく、アザも残っていないのだという。
「夫と離婚したい」。女性はそう思っているが、夫は「慰謝料1億払えば離婚してやる」と無茶な要求をしてくるそうだ。自分を風俗で働かせ、収入を横取りする夫と離婚することは可能だろうか。羽賀裕之弁護士に聞いた。
●離婚できる条件とは?
「民法には、『これがあれば離婚が認められる』という離婚原因が5つ定められています。これを、法定離婚原因といいます。
今回のケースは、法定離婚原因のうち『悪意の遺棄』『婚姻を継続し難い重大な事由』にあたる可能性があります」
羽賀弁護士はこのように説明する。
「まず、女性は『収入を横取りされている』とのことですが、夫がそれを夫婦間の生活費に全く充てずに浪費しているような場合には、『悪意の遺棄』にあたる可能性があります。『悪意の遺棄』とは、生活費を入れないなど、配偶者が結婚の義務を故意に怠ることです。
『悪意の遺棄』にあたらない場合でも、夫の浪費によって家計が逼迫しているのであれば、『婚姻を継続し難い重大な事由』にあたる可能性があるでしょう」
女性は、夫からDVも受けているそうだ。
「暴力が継続的に行われているということであれば、『婚姻を継続し難い重大な事由』にあたります。ただし、暴言などの精神的暴力については、その精神的暴力に加えて、別居していることが必要になります」
●DVの事実を証明するには?
女性は、DVを受けたがケガは軽く、アザなども残っていないという。こうした場合に、DVの事実をどう証明すればいいのか?
「ケガが軽いということですから、病院にも行っていないのかもしれませんね。診断書や、怪我をした部位の写真、DVが行われた際の動画といった直接的な証拠がない場合、間接的な証拠でその事実を推認していくことになります。
証拠の例としては、DVの際に壊れた物の写真、近隣住民の陳述書、被害者本人の陳述書、当事者同士のメールのやり取りなどが挙げられます。また、警察に相談した事実自体も証拠となります」
ただし、「間接的な証拠によって、DVがあった事実を認定するのは、かなり厳しい」と羽賀弁護士は指摘する。
「身の安全が第一ですから、あまり証拠を取ることに固執せず、早期に別居をして夫から離れたうえで、弁護士に相談したほうがいいでしょう」
弁護士ドットコムニュースでは、恋人やパートナーとの間で起こる「DV」に関する取材を続けています。「(夫やパートナーから)望まない性行為を強要された」「暴力を振るわれている」「妻から毎日暴言をぶつけられる」「シェルターに入ったあとも追いかけられた」などの体験がありましたら、以下からLINE友だち登録をして、ぜひご連絡ください。