国を相手取り、同性婚を求める訴訟が全国で起こされるなど、性的マイノリティに対する関心が高まる中、7月21日に投開票が行われる参院選で、各政党が性的指向や性自認に対してどのように考え、どのような政策を掲げているのかを調べたアンケート結果が発表された。
アンケート調査は、性的指向や性自認などにより困難を抱えている人に対する法整備を目指している「LGBT法連合会」が実施。7月10日までに回答のあった、自民、公明、立憲、国民民主、共産、維新、社民、幸福の各政党の結果を公開した。それによると、「LGBTに関する課題を人権問題として取り組むか」「参院選で公約を入れているか」という設問に対して、ほとんどの政党から前向きな回答が得られた。
一方で、同性カップルに対する法的認知やサポートの法制化については、立憲、共産、社民が「同性間でも男女と同じ婚姻制度を適用できるようすべきだ」と回答したが、自民は「憲法24条は、同性カップルの婚姻の成立を想定してない」という従来の政府見解を繰り返し、「慎重な検討が必要」とするなど、個別の具体的な政策については温度差が顕著となった。
●すべての党が「人権問題として取り組み必要」
アンケート調査によると、「LGBTに関する課題全般に、人権問題として取り組んでいくことをどう思われますか?」という設問に対して、回答したすべての政党が「人権問題として積極的な取り組みが必要だ」とした。
さらに「性的指向や性自認に関する人権を保障する法制度の制定」についての考えを質問したところ、自民、公明、立憲、国民、共産、社民とほとんどの政党が「法制度の制定に賛成で、そのための施策がマニフェスト・公約に入っている」とした回答した。維新は「法制度の制定には賛成だが、そのための施策はマニフェスト・公約に入っていない」という立場だった。
しかし、全ての政党で、LGBTに対する人権問題に意識はあるものの、個別の具体的な政策については、温度差が見られた。その一部を紹介する。
●教育や職場での差別禁止は?
【教育】
学校ではLGBTの子どもたちが困難を抱えているが、「全職員への知識の啓発・訓練」について、「法律で義務化すべき」としたのは、公明、立憲、国民、共産、社民だった。自民は「研修などを強化し、一層の理解を促していること」などを政府に要望、「その取り組みをフォローアップしている」にとどまった。維新は「党内議論を深めている」、幸福は「行政の裁量に委ねる」とした。また、「多様な性を授業などで学習することを通じた子ども間のいじめ・差別の防止」については、公明、立憲、国民、共産、社民の5党が「法律で義務化すべき」と回答した。
【就労】
就職や職場でのLGBTに対する不利益取り扱い、ハラスメントに関しては、「採用時及び就労期間中の不利益・不均等な取り扱いの防止・禁止」について、公明、立憲、国民、共産、社民は「法律で義務化すべき」と回答した。幸福は「現場の裁量に委ねる」。
自民は「積極的受容を行なっている企業などが存在することを踏まえ、そうした事例を収集し、広く情報提供を行うことにより、当事者が参照できるようにするとともに、他事業者の取り組み検討の参考に供し、後押しすること」などを政府へ要望。「政府の取り組みについてフォローアップを行なっている」とした。
維新は「党内議論を深めている」と回答した。
●同性婚、立憲・共産・社民が法制化に「賛成」
また、現在、全国で集団提訴され、話題となっている同性婚について、「同性カップルは現行の婚姻制度に当てはまらない困難に陥る例が多く、異性カップルと同様・同等に法的認知・サポートを受けられるようにする法制化を望む声が高まっている。どのような対応が望ましいか?」と質問。「同性間でも男女と同じ婚姻制度を適用できるようすべきだ」と回答したのは、立憲、共産、社民だった。
国民と維新は「現在の婚姻に加えて、(事実婚など異性間でも)同性間でも利用できるパートナーシップ制度を設けるべきだ」と回答した。
また、自民党は「憲法24条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると定められており、現行憲法下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」という政府見解と同じ考えだとした。一部自治体で採用されている同性パートナーシップ制度については、「国民の性的指向・性同一性に対する理解の増進が前提であり、その是非を含めた慎重な検討が必要あるものと考える」とした。
公明は「国民の性的指向と性自認に対する理解の状況も踏まえ、今後検討が必要」とし、幸福は「賛同しかねる」としている。
調査結果の詳細は、LGBT法連合会のサイトで紹介されている。 http://lgbtetc.jp/news/1502/