2019年05月14日 09時51分

10歳不登校YouTuber「少年革命家ゆたぼん」のなりすまし、名誉毀損の可能性も

10歳不登校YouTuber「少年革命家ゆたぼん」のなりすまし、名誉毀損の可能性も
10歳不登校YouTuber「少年革命家ゆたぼん」を名乗るTwitterの偽アカウント(5月13日正午現在)

ネットで議論を呼んでいる10歳の不登校YouTuber「少年革命家ゆたぼん」さんの偽アカウントがTwitterで続出している。琉球新報などによると、ゆたぼんさんは、沖縄県在住の小学5年の男児で、小学3年生から不登校になった。現在は「少年革命家ゆたぼん」を名乗ってYouTuberとして活動、「不登校は不幸じゃない」というメッセージを発信している。

ゆたぼんさんについては、琉球新報で5月5日、その活動が紹介されると、ネットで大きな反響を呼んだ。脳科学者の茂木健一郎さんもTwitterで「学校に行かなくても、学ぶことは無限にできる。社会性も、学校で身につく社会性がすべてじゃない。そもそも同じ年齢の子どもたちだけの『社会』は『社会』じゃない」(5月5日)と記事を紹介、応援の姿勢をみせた。

一方で、不登校のきっかけとなった「宿題を拒否」したことや、不登校を肯定し、YouTubeへ出演させている保護者に批判が集中している。そうした中、ゆたぼんさんを名乗るTwitterの偽アカウントが続出。偽アカウントの一つから、ゆたぼんさんへの批判を受け入れる形のツイートが5月11日に投稿され、一時は本人のものと誤解されて8000RTを超える(5月13日現在)など混乱を呼んだ。

「【ご報告があります】

今まで僕は『お父さんの言うとおり』に学校を休み動画内で話をしインタビューに答えてきました。 でも、ある事に気づいた。それはすべて『お金の為』だったという事です。 僕はお父さんの道具じゃない。そんなの嫌だ。

これからは正直に生きます。

来週の月曜、学校行きます。」

これ以外にも、ゆたぼんさんの名前や画像を使った偽アカウントは多数ある。このように他人にSNSでなりすます行為には、どのような問題があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

●肖像権侵害やプライバシー権侵害の問題も

勝手に他人のアカウントになりすまし、SNSでそれらしく振る舞う行為はどのような法的問題がある?

「『なりすまし』を直接に違法とする法律はありません。しかし、『なりすまし』による行動が他者の権利を侵害しているケースは往々にしてあり、『なりすまし』の態様にもより違法になる可能性は十分あります。

まず、『なりすまし』をした上で、なりすまされた人の社会的評価を低下させるような言動、行動を繰り返しているようなケースでは、名誉毀損を問題にすることができます。今回のケースでは、過激な発言や性的な発言をしている様子があるため、名誉毀損であると言う余地は十分あるように思います」

名誉毀損以外にはどのような問題があるのだろうか。

「次に、本人の顔写真を勝手に使っていることから、肖像権侵害と言えるほか、写真を撮ったのが本人である場合などは著作権侵害を主張することも可能でしょう。

また、なりすまされた人の私生活を実際に暴露していたり、私生活上のものと誤解されるような情報を流しているので、プライバシー権侵害と言える蓋然性も高いです。本当のことだけがプライバシーになると思われることも多いですが、本当のこと『らしく』受け取られる情報もプライバシーの保護範囲に含まれています」

●なりすまし自体が子どもへの非難に

「さらに、近時、なりすまし事案に関して『アイデンティティ権』という概念が用いられる例が出ています。アイデンティティとは自己同一性のことであり、他者に認識される自分が他の人格から区別され、同一性が保持されるべきであるというのが、アイデンティティ権の考え方です。

どういった場合に侵害になるかについて確立しているわけではないものの、アイデンティティ権という考え方は、大阪地裁平成28年2月8日判決や大阪地裁平成29年8月30日判決によって認められています。

アイデンティティ権の考え方によれば、他者により人格の同一性が偽られること自体が侵害と捉えることができるため、原則として、なりすましは違法である、と言えることになります」

今回のケースは、まだ10歳の子どもになりすますというものだった。

「『なりすまし』をする側は、面白半分、からかい半分といった軽い気持ちで行っていることが少なくなく、本件でもネタとして楽しんでいるのだろうと思います。しかし、なりすますこと自体が、ネットの匿名性に隠れた卑劣な行為といえる上、特に本件のような若年の子どもに非難を誘導するような行動は非常に問題であると感じます。

このYouTuberやその保護者に対する攻撃としてではなく、そもそも学校制度はどうなのかといった個別事案から離れた建設的な議論ができるようなリテラシーを備えていくことが、SNSを利用する一人一人に求められると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

清水 陽平弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitter、Facebookに対する開示請求でともに日本第1号事案を担当し、2018年3月、Instagramに対する開示請求の日本第1号事案も担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所URL:http://www.alcien.jp
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