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赤松氏「私の単行本も翌日には全世界にばらまかれてる」海賊版サイト対策でヒアリング
知的財産戦略本部の「検証・評価・企画委員会」コンテンツ分野の様子

赤松氏「私の単行本も翌日には全世界にばらまかれてる」海賊版サイト対策でヒアリング

知的財産戦略本部の「検証・評価・企画委員会」コンテンツ分野の会合(中村伊知哉座長)が4月23日、東京都内で開かれた。漫画やアニメなど、インターネット上の海賊版対策をめぐり、漫画家や出版社、消費者団体の代表者からヒアリングがおこなわれた。著作権侵害コンテンツに誘導する「リーチサイト」の規制を早急に実現すべきという声があいついだ。

●「総合的な対策メニュー案」が検討されている。

昨年、この委員会のタスクフォース(村井純共同座長・中村伊知哉共同座長)で、インターネット上の海賊版サイト対策が議論された。ブロッキング(アクセス遮断)の導入をめぐり意見が激しく対立したため、報告書はまとまらなかったが、このときの議論を踏まえて、次のような段階的に実施する「総合的な対策メニュー案」が現在検討されている。

(1)著作権教育・意識教育 (2)正規版の流通促進 (3)海賊版サイト対策の中心となる組織の設置 (4)国際連携・国際執行の強化 (5)検索サイト対策 (6)海賊版サイトへの広告出稿の抑制 (7)フィルタリング (8)アクセス警告方式の検討 (9)アクセス警告方式の導入 (10)リーチサイト対策 (11)著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化 (12)ブロッキング

このうち、(1)〜(8)はできるところから直ちに実施する、(9)〜(11)は導入・法案提出に向けて準備する、(12)は他の取り組みの効果や被害状況をみながら検討する――と区分されている。

●「リーチサイト対策は、ぜひともやってほしい」

日本漫画家協会の赤松健氏(常務理事)は、アクセス警告方式やブロッキングについて「国民生活にかなり影響があるので、われわれ(漫画家)を海賊版サイトから守るために導入するということに関しては、漫画家側として『反対』とまでは言わないが、抵抗感がある」と述べた。

また、静止画ダウンロード違法化については、懸念を示しつつも、「制限をかければ賛成する」とした。リーチサイト対策については、「私の単行本も、(発売)翌日には、全世界に海賊版がばらまかれている」「すごくショックだ」と思いを語りながら、「ぜひともやっていただきたい」と訴えた。

●「出版社は長年、海賊版とたたかってきた」

出版大手・集英社社の鈴木春彦氏(常務取締役)は「出版社は長年、海賊版とたたかってきたが、なかなか撲滅することもできず、大変苦しい思いをしてきた」「正規版の拡大と、海賊版対策は両輪だ。海賊版対策の総合メニューは、どれもスピード感をもってほしい」と話した。

また、次のような懸念も示した。

「リーチサイト、ダウンロード違法化の範囲の見直しについては、クリエイターやネットユーザーの懸念や誤解を払拭する必要があるが、この秋の臨時国会での成立を強く希望している。もしこの法案が通らなければ、『リーチサイトは運営してOKではないか』『漫画の海賊版はダウンロードして良いんじゃないか』ということが記憶されてしまう」

●「海賊版サイト運営者の取り締まり強化して」

全国消費者団体連絡会の浦郷由季氏(代表理事)は「だれしもがインターネットの仕組みを理解して使っているわけではない。よくわからないまま、だんだんと使い方を会得していく。知らないうちに、違法な情報にアクセスしてしまったり、違法な行為におよんでしまうおそれもある」と指摘した。

浦郷氏はそのうえで「まずは、海賊版サイト運営者の取り締まりを強化して、海賊版サイトをなくしていくことが重要だ」と述べた。ユーザーの「通信の秘密」に抵触するアクセス警告方式の導入については、慎重な姿勢を示し、ブロッキングの導入には強く反対していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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