2018年12月15日 08時28分

チケット転売規制法のポイント 「明日のライブ行けない」場合、転売したら違法?

チケット転売規制法のポイント 「明日のライブ行けない」場合、転売したら違法?
画像はイメージです(melis82/PIXTA)

音楽コンサートやスポーツイベントなどのチケットの不正転売について、インターネット上も含めて罰則付きで禁止する「チケット転売規制法」が12月8日未明、参議院本会議で全会一致で可決、成立した。

音楽コンサートを中心に、ライブ・エンターテイメントの市場が近年広がっているが、インターネット上では、人気アーティストのコンサートや、スポーツイベントのチケットが、高額で転売されるケースが相次いでいる。

チケット転売規制法は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、こうした転売業者による買い占めを防ぐことが期待されている。では、どんな行為が禁止されるのだろうか。

たとえば、急きょ都合や体調が悪くなって、明日のライブに行けなくなった場合に転売しても、「アウト」なのだろうか。この法律のポイントについて、音楽コンサートのチケット転売問題に取り組んできた太田純弁護士に聞いた。

●規制対象となるチケット

――どんなチケットが対象になるのでしょうか?

法律の正式名称は、「特定興行入場券の不正転売等による興行入場券の適正な流通確保に関する法律」です。

規制の対象となるチケットは、映画、演劇、演芸、音楽、舞踏、その他芸術、芸能またはスポーツを不特定多数に見せ、聴かせる興行が対象です。そして、日本国内で開催されるものに限られています。

――ほかの条件はありますか?

すべてのチケットが規制の対象になるのではなく、一定の条件を満たす必要があります。

(1)興行主や、興行主から依頼された販売業者が、

(a)販売時に無断の有償譲渡を禁止し、(b)入場できる人の氏名・連絡先を確認した上で、

(2)チケットの券面に、(1)を表示したもの、かつ、日時場所のほか、入場できる資格者か、座席指定が表示されているもの、です。

簡単にいえば、チケットを買うときに「無断転売禁止ですよ」という説明があり、入場できる人の氏名と連絡先を確認した上で、チケットにも「無断転売禁止」「入場者氏名」「連絡先」「開催日時」「座席番号」が表示されている場合です。また、こうした条件を満たせば、「QRコード」のようなものも対象となります。

●規制対象となる行為

――どんな行為が禁止されるのでしょうか?

規制の対象は、不正転売と、そのための仕入れ行為です。

不正転売とは、興行主に無断で、業として行う有償譲渡のうち、「興行主の販売価格を超える価格」での転売です。そのような業として行う不正転売を目的とする譲り受け(仕入れ)も禁止です。

罰則としては、1年以下の懲役または500万円以下の罰金、または併科とされています。

このように、「興行主の販売価格を超える」価格での転売が禁止されますが、同額での転売、それ以下の転売は禁止されません。有償譲渡を禁止するだけですから、タダで譲渡することはもちろん自由です。

ただし、「有償」に関しては、かならずしも現金だけが対価ではなく、見返りとしての物や役務でも、対価性があれば有償性を認定される可能性があります。

――都合が悪くなっていけなくなった場合に転売したら、どうなるのでしょうか?

禁止されるのは、不正転売とそのための仕入れですが、ここで解釈が生じるのは、不正転売が「業として」なされているか、という点です。

これは、ほかの法律での「業として」という文言の解釈が参考となります。「業として」とは、おおむね「反復継続する意思のもとで行う」ということであり、都合が悪く行けなくて、たまたま、というのであれば、このような反復継続して行う意図は普通、うかがえませんので、規制の対象外とされます。

しかし、逆に言えば、仮に1回だけだったとしても、外形などから見て、反復継続する意思がうかがえるような場合は、「アウト」です。そのような場面で「1回だけじゃないか」と弁解しても、通らない場合がありえます。

●適切に検挙していくことが重要になる

――悪質な転売は、これまでの法律でカバーできなかったのでしょうか?

これまでも、都道府県の条例などで、「公共の場所」でのダフ屋行為が規制されていました。しかし、ネット上のダフ屋行為の問題に対応することが困難だったことから、新しい法律が登場したわけです。また、不正転売を禁止するだけでなく、そのための仕入れ行為を禁止したことに、意義があります。

――今後の課題はありますか?

今回の法律をご覧になってわかるように、日本は古くから、紙文化からの脱却が苦手で、何をするにも紙、チケットが前提となっている感があります。今日では、多くの方がスマホなどの携帯端末を持っていて、その機械ごと譲渡してしまうことは、さすがに困難でしょうから、「チケット=紙」という発想からの脱却、電子チケットの普及、携帯端末との結び付け――これらが不正転売の防止の観点からは期待されるところです。

そのうえで、不正仕入れを規制したのであれば、それを適切に検挙していくことが重要です。高くても良い席なら買いたい人はどこで買えばよいのか、本当にほしい人はどこで買えば良いのか、という問いに、違法な業者との間で売買させない、というのであれば、ちゃんと検挙して、正しいルートを市場の消費者に開いてみせるべきです。

その観点からは、興行主側でも、不要チケットの買い取りのサービスを行うなど、行けなくなってしまった人のフォローや、そもそも興行主側でもチケット価格をより多種多様にするなどして、購入者のニーズに敏感であるべきでしょう。

なお、今回の法案では、券面等に氏名連絡先を表示し、販売時に確認するのですから、当然に個人情報保護の法令遵守は、言うまでもなく、徹底されなければなりません。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

訴訟事件多数(著作権、知的財産権、労働、名誉棄損、医療事件等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。

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この記事へのコメント

通りすがりの爺 50代 男性

この様な内容を書き込む弁護士は現実を知らない。
では、どうやってそのチケットがどちらに分類されるのか?を当日その現場現場で確認する方法は無いし、スタッフも○か×かの判断も出来ないので、怪しいものはすべて排除される。
現状、唯一の回避方法は興行主または代理店などに直接連絡を入れ”権利放棄”を申し出て当日販売分に回してもらう事くらいしか無い。
もちろん、チケットを買った本人は損をしてしまうが、転売などをするよりは遥かにまともな方法。
しゃあねえじゃん、当日体調を崩すとか生きてるうちは仕方がない。
前もって解る訳でも無いし。

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まさ 40代 男性

現実を知らないのは制定した方で
弁護士はどのようなケースが当てはまるか例を挙げてるだけです。
また、制定した方は現状を変えると言うよりは今後のオリンピックを強く意識しているのでしょう。
煩雑さは会場に個体識別コードのスキャナーを導入する事で自動判定、解決できます。

販売方法〜識別判定までをITに置き換える場合、法で明確になっている方がシステムは組みやすいと思います。
そういう後押しになる意味ある法律だと思います。

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ADD 60代以上 女性

英国のロイヤルオペラ(コヴェントガーデン)、香港のアーツフェスティバル等では、リセールの仕組みがあり、ソールドアウトチケットに限って、都合が悪くなった人から手数料を取って払い戻しに応じ、そのチケットを第三者に再販売するという仕組みがあります。劇場や主催者自らが行うことで、適正価格を維持し、行けなくなった人、チケットを求める人双方のメリットとなります。また別の国では、会員券を購入した後で都合が悪くなった場合、別の日時と交換できる(回数は限定?)という仕組みの処もあります。個人を特定して販売する場合は、購入した人の都合もある程度は考えて、お互いに損をしないよう、転売の許容範囲も想定した対策を考えるべきだと思います。いくら観客の自己責任といっても、空席があるより客席が埋まっていた方が、出演者の気分も違うでしょうし。

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