コンビニで立ち読みをしていたら、店員から「買わなきゃ帰っちゃダメ」と言われたーー。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は、弁当を買うために入ったコンビニで立ち読みを2〜3分ほどしました。すると、店員がやってきて「困るんだよね~買わなきゃ帰っちゃダメだよ」と言われました。結局、立ち読みしていた週刊誌を購入し店を出たといいます。
このコンビニで立ち読み客に声をかけるのは珍しくないようで、相談者の知り合いも以前、同じように声をかけられ雑誌をしぶしぶ購入したそうです。相談者は「こういう接客は法的にはなんら問題はないのでしょうか」と疑問に感じています。
このように店員から購入を迫られた場合、拒否しても問題ないのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。
●雑誌の買取りを強制されることにはならない
「結論から言えば、購入を拒否したとしても、法的な問題はありません」
立ち読みは法的にどう考えられるのでしょうか。
「初めに、コンビニでの立ち読みの定義づけをしたいと思います。ここでは立ち読みを『客が購入する意思がないのに、商品である雑誌等を店に無断で読むこと』と定義します。雑誌等を購入するかどうかを判断するために中身を見る行為は、立ち読みとは考えないことにします。
また,そもそもの前提として,客は,原則的にその意思に反して雑誌を購入させられることはありません。客の立ち読みが、コンビニに損害を与えた場合は、不法行為が成立し、損害賠償責任が発生しますが、雑誌の買取りを強制されることにはなりません。
これらのことを前提に、コンビニが立ち読みを許容しているかどうかで場合分けをして検討してみます」
●数分の立ち読み程度なら不法行為が成立しない
では、コンビニに置いてある雑誌が、立ち読み可能な状態に置かれており、立ち読みを禁止する張り紙などがなされていない場合はどうでしょうか。
「客が立ち読みすることは、法律的に考えて何ら問題ありません。客は、コンビニに損害を与えていませんから、損害賠償責任を負いません。
このような場合に、店員が『買わなきゃ帰っちゃダメ』と言うことについては、言い方にもよるので、問題ないとは言い切れませんが、立ち読みに対するクレームという程度であれば、購入を強制したとは言えず、法律的には問題ないと考えて良いと思います」
もしコンビニが、「立ち読み厳禁」と貼り紙をしていた場合は、どうでしょうか。
「その場合、当然のことながら、客は立ち読みをすることはできません。それでも立ち読みをした客がコンビニに対し、損害賠償責任を負うかどうかは、客が立ち読みをしていた時間や、雑誌の状態等により結論が変わりうると思います。
相談者は、2~3分ほど立ち読みしたということですが、この程度の短時間の立ち読みで、しかも雑誌がいまだ新品と同様の状態であれば、客の行為には不法行為が成立せず、客は損害賠償責任を負わないと考えて良いと思います」