京都大学の名物といわれる「立て看板」(タテカン)の歴史が終わろうとしている。
京大の吉田キャンパス(京都市左京区吉田)周辺には、学外からも見えるところに、サークル団体やイベントなどの看板が立てかけられていた。ところが、京都市から景観条例違反の指導を受けていた大学側が5月1日、「京都大学立看板規程」を施行し、看板の撤去をもとめる通告書を出したのだ。
公道に面した立て看板に貼られた通告書は「直ちに撤去するか、または、公認団体は、立看板規定に沿って、指定された場所に設置してください。そのままになっている場合は、大学が撤去します」と書かれている。
京大広報によると、この数年、京都市から景観条例違反の指導があり、昨年には特別強い指導があったという。「京都市内に京大があるかぎり対応しなければならなかった」(担当者)。京大は昨年12月に「立看板規定」をつくり、入試・合格発表・新入生歓迎の混乱をさけて、今回の施行に至ったという。
●「『自由』という言葉をプロモーションに使っているだけ」
弁護士ドットコムニュース記者が昨年12月に数えてみたところ、公道に面して、約140の看板が立てかけてあったが、5月1日現在、20〜30ほどに減っていた。大学側はウェブサイトなどであらかじめ知らせており、ほとんどの立て看板が連休前に引き上げられたという。
今後は決められた場所以外に看板を設置できなくなるが、撤去されない場合は、大学側が撤去することになる。日程はまだ決まっていないという。京大広報は「あくまで自主的に撤去してもらいたいと考えている。施行後の様子を見てから、今後の対応を検討したい」としている。
京大の「自由さ」にあこがれて入ったという京大文学部博士課程の男性(27)は「今の大学当局は『自由』という言葉をプロモーションに使っているだけで、実際は『自由』を抑圧する方向にむかっているように思える。京大の『自由』が終わるかもしれない」と語った。
京大正門前では、立て看板の撤去について反対をうったえて、一部の学生が拡声器を使った運動をおこなった。一方で、無関心な学生も少なくない。農学部4年生の女性(22)は「立て看板がなくなるのは悲しいけれど、正直どっちでもいい」と話していた。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)