2018年04月26日 20時01分

「ネットの自由のために動きたい」違法コンテンツの削除弁護士が「ブロッキング」差し止め提訴、真意を聞く

「ネットの自由のために動きたい」違法コンテンツの削除弁護士が「ブロッキング」差し止め提訴、真意を聞く
中澤佑一弁護士

「海賊版サイト」をアクセス遮断(ブロッキング)する措置は違法だとして、個人でNTTコミュニケーションズ(OCN)とプロバイダ契約を結んでいる弁護士が4月26日、同社を相手取り、ブロッキングの差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。

原告の中澤佑一弁護士は、ネット事件専門の弁護士として、ウェブ上の有害情報の削除、投稿者に対する法的責任追及などをメインにおこなっている。今回の提訴は、普段の彼からすれば、真逆のように思えるが、「なし崩しでブロッキングが始まる前に止めないといけないと思った」と話す。

NTTコミュニケーションズを含むNTTグループ3社は4月23日、準備が整い次第、ブロッキングを実施すると発表した。今回の提訴は、まだブロッキングがはじまっていないため、妨害予防をもとめている。中澤弁護士によると、今後ブロッキングが開始されると、慰謝料などの請求を追加していくことになるという。

今回、どのような思いで提訴に踏み切ったのか。中澤弁護士は26日午後、都内でネットメディアの共同取材に応じた。

●「インターネットが自由な流通基盤であるところが一番大事」

――提訴に踏み切った理由は?

私のメインの業務は、今回と逆で、発信者情報開示や違法コンテンツの削除です。なので、「ブロッキング」や「通信の秘密」が軽くなるということは、通常業務的には歓迎することですが、インターネットが自由な流通基盤であるところが一番大事だと思います。

違法なコンテンツ対策と自由のバランスをとらないといけない。何の司法判断も得ていない段階では、海賊版サイトも、一部の人にとって嫌なサイトにすぎない。そういうものを勝手な恣意的な判断で遮断することは、少なくとも日本の法体系的にはありえません。

そういうことをやってしまうと、なんでもいいのかということになってしまう。今後のインターネットの自由を考えると、何かしたほうがいいと考えて提訴に踏み切りました。

――どんな訴訟なるのか?

私は自由にインターネットができるはずだし、私の通信をNTTコミュニケーションズの人たちが覗き見る権利はないというのが契約です。だから、不法行為ではなくて、契約の履行をもとめるものです。遮断を止めてもらうことです。ただ、ブロッキングがはじまって、通信を見られるということになると、慰謝料が発生すると思っています。

児童ポルノのブロッキングも、緊急避難が成立しないんじゃないかという説が強いが、なぜいま合法かというと、各社の約款に入っているからです。ブロッキングは違法だけど、ユーザーの同意があるという構成になっています。(一方で)著作権侵害サイトのブロックのために私の通信の中身を覗き見るという行為については同意していません。慰謝料は認められると考えています。

●「ブロックしていい、悪い」は裁判所が決めるしかない

――争点は?

(1)通信の遮断が「通信の秘密」の侵害にあたるのか、(2)児童ポルノのブロッキングがすでにされているので、追加で実害が生じるのか――というところになります。

――勝訴の見込みはあるのか?

NTTコミュニケーションズに「もう(ブロッキングは)やらない」と言われて、裁判所に判断されない、という可能性もあります。ただ、方針に変わりはないということですので、最終的にブロッキングするところまでいくならば、負ける理屈は今回ないはずです。

価値判断として、海賊版の良い悪いはあるが、純粋な法の理屈でブロックできるといえません。政府の「緊急避難」(ブロッキングの違法性阻却事由)も成立しないと言われはじめています。だから、「緊急避難」以外の理屈を考えてくる可能性はあるでしょう。

――海賊版サイトに対抗するために、国内法は変えるべきか?

国内では、発信者情報開示があり、ある程度認められています。限定的に「こういう場合はいいよ」となっています。法律が実態に追いついておらず、法律に書いていない契約形態、サービス形態が広がっています。新しいものが開示対象外になっています。そのあたりを直すことになります。国際的な枠組みについては、条約や国際捜査協力など、政府間でやることになります。

また、結論として、ブロッキングをやることは悪くないと思いますが、「ブロックしていい悪い」を誰を決めるのか。裁判所が決めるしかないと思います。だから、裁判を経たものであれば、プロバイダがブロックしても責任を問われないという規定を入れることになると思います。

また、漫画村のように、(運営者が)誰だかわからないサイトを訴えるためには、相手を特定する必要がありますが、名前がわからなくても対象が特定できれば裁判できるようにすることも、国内だけで被害をとどめる措置としてあります。

(弁護士ドットコムニュース)

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