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「堂島ロール」ロゴ類似で「プレミアム」に勝訴、ポイントとなった「一般消費者の視点」
「モンシェール」が販売する堂島ロール

「堂島ロール」ロゴ類似で「プレミアム」に勝訴、ポイントとなった「一般消費者の視点」

人気のロールケーキ「堂島ロール」に類似しているとして、販売元の「モンシェール」(大阪市)が、「堂島プレミアム」(大阪市)に1億円の損害賠償を求めた訴訟で、4月17日、大阪地裁は「類似している」と認め、ロゴの使用差し止めと3426万円の支払いを命じる判決を下した。朝日新聞などが報じている。

モンシェールが販売する「堂島ロール」は、従来のロールケーキに比べて、クリームの量が多いのが特徴で、2000年代半ば頃から全国的に人気を博すようになった商品だ。一方の堂島プレミアムの「堂島プレミアムロール」は2012年に販売されており、ロゴやロールケーキの見た目がよく似ていた。

今回、大阪地裁が類似していると認めたポイントはどこにあるのか。堂島ロールによく似た、クリーム多めのロールケーキはコンビニでもよく見かけるが、今後、形状がよく似た商品についても影響するのだろうか。佐藤 孝丞弁護士に聞いた。

●「商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否か」

ーー人気の商品だけに、報道も相次ぎました。裁判は、どのような点がポイントとなったのでしょうか。

大阪地裁判決のポイントから解説します。

今回の訴訟の中心的な争点となったのは、モンシェールの「堂島ロール」のロゴ(商標登録第5031406号、第5446720号)と堂島プレミアムの「プレミアムロール」のロゴとが、商標法上類似し(商標法37条)、商標権を侵害しているか否かという点にあります。

裁判実務では、類似する商標といえるかについて、「商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否か」という判断基準を利用しています。

その際には、当該商標の外観(見た目)、観念(意味)、称呼(しょうこ=呼び方)及び商品の取引状況等を考慮します。また、当該商品の主な購買層が通常有する注意力という視点(つまり、業界人目線ではないということです)で判断します。

●主な購買層である「一般消費者」の視点

ーー今回、大阪地裁はどのように評価したのでしょうか。

大阪地裁では、前述した事情を考慮し、両者のロゴが類似しているとの結論を出したものといえます。

確かに、両者のロゴの見た目、「堂島」と「ロール(ケーキ)」という文言の意味や呼び方、販売価格がほぼ同じという取引状況等をふまえると、主な購買層である一般消費者からすれば、「堂島ロール」を販売するモンシェール製なのか否かを区別するのは難しいといえます。

●商品の「形状」は、意匠法や不正競争防止法によって保護される

ーー「堂島ロール」の大ブームにより、商品名こそ違うものの、形状がよく似た「ロールケーキ」が数多く売られています。今回の判決により、今後、こうした製品にも影響はあるのでしょうか。

商標法は、商品の形状ではなく、あくまで商品又はサービスにおけるロゴ等の商標を保護しています。したがって、他社のロールケーキが「堂島ロール」と類似するロゴを使用して販売されていれば、商標権侵害の可能性があります。

一方で、商品の「形状」については、意匠法や不正競争防止法によって保護され、違法な行為に対して販売差止や損害賠償請求ができます。

モンシェール(旧:モンシュシュ)は、一部のケーキの形状について意匠登録をしていますし(意匠登録第1380039号)、ケーキのような食べ物だからといって意匠登録の可能性がないわけではありません。

また、意匠権侵害が問題とならないとしても、不正競争防止法が模倣品の販売等の行為を規制しています。したがって、商品の形状については、他社商品の意匠権の有無や違法なデットコピー(模倣商品)と疑われるリスクがないかについて慎重に検討する必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

佐藤 孝丞
佐藤 孝丞(さとう こうすけ)弁護士 井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
都内を中心に、企業法務一般、特に著作権・商標権・模倣品対応等の知的財産案件に注力。特許庁審判部にて勤務経験があり、弁理士としても活動中。一方で、相続等の様々な案件を取り扱う。弁護士知財ネット会員。

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