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賃貸の退去時に修繕費「12万円」も請求された! 払わないといけない?
退去時に修繕費やクリーニング費を請求されることがある(teresa/PIXTA)

賃貸の退去時に修繕費「12万円」も請求された! 払わないといけない?

賃貸物件から退去しようとしたら、不動産屋から「12万円」も請求された――。そんな内容のツイートが3月下旬、話題になりました。ちょうど引越しシーズン真っ盛りということもあり、ユーザーの関心をあつめたようです。

賃貸のマンションやアパートから退去するとき、修繕費やクリーニング費を求められることがあります。ただ、こうした費用はトラブルの原因にもなっています。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、修繕費に関する相談がたくさん寄せられています。

「入居時にあずけた敷金がほとんど戻ってこなかった」「キレイに使っていたのに、数万円の支払いを求められた」。そして、その費用の根拠もきちんと説明されていないようです。

このように賃貸物件の退去時に、貸主側から「修繕費」や「クリーニング費」などを求められた場合、どう対応したらいいのでしょうか。不動産問題にくわしい小西徹弁護士に聞きました。

●修繕費を支払わなくていいケース

――修繕費やクリーニング費は支払う必要があるのでしょうか?

マンションやアパートの賃貸借契約は、貸主が借主に建物を使わせるかわりに、借主が賃料を支払うという契約です。

そして、通常の使用に伴う汚れや傷みが生じることは、もともと予定されています。その部分については、賃料によってカバーされていると考えられています。

したがって、通常の使用に伴う汚れや傷みがあったに過ぎない場合には、借主は修繕費やクリーニング代を支払う義務はありません。

たとえば、家具の設置による床・カーペットのへこみや、設置跡、畳の変色、壁の画びょう穴などについては、修繕費を支払う必要はありません。

●修繕費を支払わなくてはいけないケース

――では、支払わないといけないケースはありますか?

通常使用に伴う汚れや傷みを超えて、借主が誤って汚れや傷みを生じさせた場合は、修繕費やクリーニング代を支払わなければなりません。たとえば、カーペットに飲み物をこぼしたことによるシミや、タバコの不始末による焦げ跡などです。

また、賃貸借契約書に、通常使用に伴う汚れや傷みについても、借主が負担するという特約が付いている場合があります。その有効性の判断は複雑ですが、有効となることがあります。その場合、通常使用に伴う汚れや傷みについても、修繕費やクリーニング代を支払わなければなりません。

●「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしよう

――修繕費に基準はあるのでしょうか?

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf)が参考になります。たとえば、フローリング補修の場合は、原則として、1平方メートル単位とされています。

――敷金から勝手に差し引かれていたら取り戻せますか?

貸主が、借主の同意なく、敷金から差し引くことはできます。取り戻せるかどうかは、そもそも借主が、その修繕費やクリーニング代を支払わなければならないかどうかによります。

――退去時にトラブルが起きた場合、どう対応したらいいのでしょうか?

原状回復については、専門的な問題になりますので、まずは弁護士に相談するのがよいと思います。ただし、金額が少額の場合は、弁護士のアドバイスを参考にしながら、ご自身で対応するのもよいでしょう。

手順としては、まずは貸主と交渉をおこないます。それでも解決しない場合には、裁判所に訴えることになります。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小西 徹
小西 徹(こにし とおる)弁護士 目黒・白金法律事務所
東京弁護士会所属。民事事件を広く取り扱っており、特に不動産、企業法務、交通事故を得意とする。新しい法律問題にも積極的に取り組んでおり、近時、民泊について、不動産会社や管理組合から多数の相談・依頼を受けている。

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