世界に広がる「MeToo」ムーブメント。しかし、日本では下火の印象すら受ける。どうやって性暴力に反対する社会をつくれば良いのか。2月23日、都内のイベントに登壇したジャーナリストの伊藤詩織さんは「WeTooならどうだろう」と会場に呼びかけた。
なぜ、日本でMeTooが十分に広がらなかったのか。詩織さんはこう分析する。
「私も今まで誰かを傷つけたことはたくさんあると思うし、意識していない中でしてしまった行動だってある。自分の胸に手を当てると、みんな何かしら思い当たるものがある。それが、MeTooと言っている人と距離を置いたり、批判してしまったりすることにつながっていると感じています」
しかし、詩織さんは過去ではなく、未来を見て欲しいのだと言う。
「(MeTooは)これからの未来の話だと思っています。性暴力、セクハラ、パワハラ、どんな形の暴力も絶対に許してはいけない。見た人は無視してもいけないということにして欲しい。いつどこで自分や大切な人に起こるか分からないから。(暴力が残る社会を)これからみんなで一緒に変えていくのが、このMeTooの運動だと思っています」
日本に限らず、「MeToo」には勇気がいる。時にはバッシングやフラッシュバックなどの危険性も伴う。だから詩織さんは言う。
「(MeTooが無理なら)『WeToo』にしたらどうなんだろうって思うんです。私たちは『全体』でこういうことは許しませんとは言えないでしょうか」「MeTooできなかった人も一緒にWeTooと言ってくれたら嬉しい」
●英国拠点に「加害者」の取材を開始「背景や構造知ることが性暴力をなくす鍵」
詩織さんは現在イギリスを拠点に「新しい取材」を始めているという。それは「加害者」のこと。
「加害は1人で始まるわけではないと思う。その人を排除しても意味がない。どういう背景や構造で、そういう行動を起こしてしまったのかを知ることが、性暴力をなくす大きなキーになる」
その上では、何をもって「加害」と言うのかという認識も重要になる。昨年「厳罰化」された改正刑法(性犯罪規定)には、付則で2020年の見直し規定がついた。「法律の見直しも今後は重要なキーワードになると思います」
発言は、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ主催のイベント「#Me Too からChangeへ 私たちの声をどう生かすか」でのもの。