横浜ベイスターズDeNAの井納翔一投手の妻が、ある女性から、インターネット上の匿名掲示板に自身を中傷するコメントを投稿されたとして、名誉毀損の訴えを起こしていることが話題となっている。
写真週刊誌「フライデー」の記事によれば、その女性はインターネット上の匿名掲示板に「そりゃこのブスが妻ならキャバクラ行くわ」と投稿したところ、約4か月後、情報開示にかかった費用の償還を含む損害賠償を求める通知が届いたという。原告である井納投手の妻は、通信会社に情報開示請求を行い、その書き込みがその女性によるものであることを特定したようだ。
この裁判で名誉毀損は成立するのだろうか。また、インターネット上の匿名掲示板に他人を誹謗中傷する投稿をすることには、どのようなリスクがあるのか。清水陽平弁護士に聞いた。
●内容が社会的評価の低下につながるかどうかで評価
「名誉毀損は、社会的評価の低下がある場合に認められるとされます。社会的評価というのは、簡単に言えば『他人にどのように見られるのか』ということであり、評判が落ちるようなことを書かれてしまえば、名誉毀損になり得るということになります。
これは、書かれた内容が本当かどうかということは考えず、書かれている内容がそれだけで社会的評価が低下するかを検討します。そのため、たとえば、犯罪報道も、その人が犯罪者であると認識されることになるため、名誉毀損に該当することになります。
しかしそうすると、報道も十分にできなくなってしまいます。そこで、公共性があること、公益目的があること、真実であること、という3つの要件を全て備えれば、違法性がないとされます」
●「ブス」で名誉感情が侵害されると言う余地はある
「本件では、ブスと言われているわけですが、美醜は人によって変わりますし、美醜によって社会的評価が低下するということも一般的には難しいです。そのため、社会的評価の低下があるとすることは困難でしょう。
もっとも、ブスと言われることで名誉感情が侵害されていると言う余地があります。社会通念上許される限度を超えるものは違法となるとされており、公然とブスと言うことは社会通念上許される限度を超えると判断される可能性があります」
●匿名でも損害賠償請求を受けるリスクあり
「匿名だから特定されないと思って、気軽に他人を誹謗中傷するコメントを書き込めば、特定されて損害賠償請求を受けるリスクがあります。
賠償金の額は、書かれた内容や頻度などにもよりますが、インターネット上でのものについては、上限金額が100万円程度、平均的なところでも30~60万円程度にはなります。さらに、特定するためにかかった費用(調査費用)は、この件では約77万円だったようですが、これも慰謝料とは別に認められる可能性があります。
気軽な投稿のつもりでも誰かを傷つけていることがあり得るということを意識して、書き込む前には一度、深呼吸をしてみるくらいがちょうどよいかもしれません」