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アウトレット沿いの公道、誘導員の指示に「強引だ」と運転手憤り…従わないとダメ?
写真はイメージです(Hutech / PIXTA)

アウトレット沿いの公道、誘導員の指示に「強引だ」と運転手憤り…従わないとダメ?

休日のアウトレットモールや大型ショッピングセンターなどでは、ひっきりなしに来る車で駐車場が満車になってしまうこともしばしば。そこで交通トラブルを少しでも避けようと、警備の服をまとった誘導スタッフが車の進路を整理するのは、よく目にする光景だ。

2018年1月2日昼過ぎ、多くの買い物客でごった返した滋賀県竜王町の「三井アウトレットパーク滋賀竜王」でも懸命に車の整理をしていた。ただ、アウトレット沿いの公道で、ある乗用車が右折をしようとしたところ、誘導スタッフは左折するように指図。運転手との間で口論に発展してしまったようだ。

インターネットの書き込みでも、丁寧でキビキビとした姿を賞賛する声がある一方、「なんの権限があって公道上で強引に停車させようとするのか」などと疑問を投げかける声も一部にある。誘導スタッフには、どのような権限があるのか。中川龍也弁護士に聞いた。

●安全のため、一定の場合には交通誘導警備員の配置義務

「道路上の安全を図るため、一定の場合には交通誘導警備員を配置することが義務づけられています。まず、道路工事等のため道路使用許可の申請を行う場合には、地方自治体の条例等によって交通誘導警備員を配置することが義務づけられています。

また、道路や交通の状況により、道路における危険を防止するために必要な場合に、道路や施設駐車場の出入り口等に警備業務検定に合格し、資格を取得した交通誘導警備員を配置することが、警備業法上、義務づけられています」

●従うかは運転者の任意、警備員の指示に法的根拠なし

それでは、配置された警備員の指示には従わないといけないのだろうか。

「道路交通法上、警備員の指示に法的な根拠が与えられているわけではありません。ですので、警備員の指示に従ったとの一事をもって、車両の運転者の安全確認義務が免除されるわけではないことに注意が必要です。

そのため、運転者は誘導員の指示に従う道路交通法上の義務はなく、従うかどうかはあくまでも運転者の任意となります。

警備業法15条も『警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、または個人もしくは団体の正当な活動に干渉してはならない』と規定しています」

●警備員の誘導だけに頼らず、しっかり安全確認を

誘導に従って運転した結果、事故を起こしてしまった場合はどうなるか。

「交通誘導警備員の配置が義務づけられている場合であっても、運転者が警備員の指示に従って進行し、事故を起こしてしまったら、原則として運転者の責任となってしまいます。警備員による誘導だけに頼って運転をせず、運転者自らもしっかり安全確認をすべきでしょう。

ただ、警備員側が責任を一切問われないというわけでもありません。警備員の車両誘導ミスにより交通事故が発生してしまったといういくつかの裁判例では、警備員にも適切に誘導を行うべき注意義務を認め、警備会社に一定の損害賠償責任を認めたケースもあります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中川 龍也
中川 龍也(なかがわ たつや)弁護士 中川龍也法律事務所
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。

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