東京・六本木で6月17日まで開かれたイベント「ブラックボックス展」(なかのひとよ|BLACK BOX)をめぐって、来場者がインターネット上で「痴漢被害を受けた」と訴えて物議を醸した。会場のギャラリーは6月21日、「警察担当者のご協力のもと事実の究明を急いでおります」とする声明をホームページに掲載した。
インターネットの投稿などによると、ブラックボックス展では、入り口の外国人男性が参加者を選別する。会場内は真っ暗で、参加者が暗闇の中を歩き回るという内容だった。行列ができるほど人気だったが、イベント終了前後からネット上で「胸を揉まれた」「キスされた」といった声があがるなど、騒動になっていた。
会場となったギャラリー「ART & SCIENCE gallery lab AXIOM」は声明で「会期中はスタッフを増員し、常に会場に待機することは無論、来場者からご指摘をいただいた際にはその都度注意を促し、展示会場内を定期的に巡回するなどして安全確保に可能な限りの体制を敷いておりました」と釈明した。
また、イベントを企画した「なかのひとよ」さんは6月21日、ツイッター上で「犯罪行為・幇助は決して本展の目的ではございませんが、結果としてそのような報告が挙げられている現状につきましては、とても悲しく、残念に思っております」とコメントしている。
今回のようなイベントで、こうした痴漢被害が多数発生した場合、主催者側に法的責任はあるのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。
●管理責任を問われる可能性も
まず、主催者の民事責任ですが、「痴漢」の発生を予見し得る場合には、管理責任を問われる可能性が出てきます。参加者は選別されるとはいっても、六本木という地域において不特定多数の人間を男女の別なく暗闇の中に入れるわけですから、「痴漢」の発生をまったく予見できないとまではいえないでしょう。
また、主催者側が弁解しているような体制を敷いていたとしても、それが「痴漢」の発生を未然に防ぐ手段として相当といえなければ、結果回避義務を尽くしたとはいえないことになるからです。
ただし、主催者の責任を問うためには、そもそも「痴漢」の発生が前提となるため、その立証自体が難しいともいえます。暗闇の中での出来事ということになると、被害者の供述しかないと思われますので、触られたということであれば、それがぶつかっただけのものなのか、故意におこなわれたものなのか、どのように区別するのかといった問題が出てきます。
●刑事責任の場合、証拠のハードルが高くなる
次に刑事責任ですが、「犯罪行為・幇助は決して本展の目的ではない」としても、「痴漢」の発生を予見しつつ営業していたとなると、少なくとも幇助の故意が認められて刑事責任を問われる可能性があります。
ただ、民事責任と同様、刑事責任を問うためには「痴漢」の発生自体について証拠がなければなりません。刑事責任を問う場合、民事責任を問う場合にくらべて証拠のハードルが高くなります。その点がクリアできないと、主催者の刑事責任にまでたどり着くことはますます難しくなります。
なお、痴漢をした人については、迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪に問われる可能性があります。公然わいせつ罪については、暗闇の中ということになると「公然」といえるのかどうか、疑義があるところではないしょうか。