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【博多駅前陥没】玄関前崩壊のセブンイレブンやシステム障害の銀行、補償はどうなる?
11月8日当日の博多駅前

【博多駅前陥没】玄関前崩壊のセブンイレブンやシステム障害の銀行、補償はどうなる?

11月8日早朝、福岡市のJR博多駅前の道路が陥没し、建物前に大穴ができた「セブンイレブン博多駅前通店」など、複数の企業・店舗が休業を余儀なくされた。

また、福岡銀行を核とする「ふくおかフィナンシャルグループ」では、大規模なシステム障害が発生。「西日本シティ銀行」も穴の近くにある支店が終日休業したり、一部のATMが使えなくなったりする被害が出ている。

高島宗一郎市長は当日会見を開き、「管理責任は市にある」と謝罪。陥没の原因が地下鉄延伸工事にある可能性があるとして、原因を究明すると話した。

穴周辺の企業・店舗はしばらくの間、陥没の影響を受けそうだが、今後の補償問題はどうなるのだろうか。林朋寛弁護士に聞いた。

●原因次第だが、基本は福岡市に責任?

「被害を受けた方は、まず福岡市側と話し合いで賠償を求めることになるでしょう。

福岡市や施工した大手ゼネコンを含むJV(共同企業体)が保険に加入していれば、その範囲では比較的スムーズに損害賠償が進むかもしれません」

ただし、弁護士ドットコムニュースが訊ねたところ、福岡市は未加入、JVの取りまとめ役である大成建設は「工事の個別案件についてはお答えしていない」とのことで、加入の有無は分からなかった。

では、話し合いでまとまらなかったらどうなるのだろうか。林弁護士は次のように解説する。

「その場合、裁判をすることになります。

陥没したのは市道ですし、自然災害ではなく市営地下鉄の工事が影響しているようですから、基本的には『道路や公の営造物の設置・管理に瑕疵があった』(国家賠償法2条)として、福岡市の賠償責任が問えるのではないかと思います。

瑕疵の認定が難しくても、福岡市の注文・指図に過失があれば、注文者の損害賠償責任(民法716条)があるといえるでしょう」

建設会社にミスがあった場合は?

「調査や工事に過失があった場合は、施工を請け負ったJVが共同不法行為(民法709条、719条)の損害賠償責任を問われます」

●福岡市「今は復旧作業で手一杯」

「話し合いにしても、裁判にしても、原因究明は欠かせません。また、事故と損害の因果関係や、どの範囲(企業・個人)までの損害を認めるかなど、認定作業には困難が予想されます。

福岡市は今後、原因究明や賠償について、弁護士などの専門家を交え、迅速適切な解決を図るべきです。また、被害を受けた企業・個人も損害賠償請求に備えて、弁護士に相談しておくとよいでしょう」(林弁護士)

福岡市交通局の担当者によると、「今は復旧作業に注力していて、補償の話は進んでいない。今後、調査などで事故原因を究明し、その後、どこが補償するか話し合うことになるのではないか」と話していた。

【11月14日追記】

福岡市営地下鉄の工事絡みでは、2000年と2014年にも道路の陥没が起きている。福岡市交通局の担当者に補償の有無を尋ねたところ、「いずれも被害規模が小さく、営業補償はしていない」とのこと。ただし、「今回に関しては被害範囲が大きいので、補償する方向で検討している」とのことだった。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

林 朋寛
林 朋寛(はやし ともひろ)弁護士 北海道コンテンツ法律事務所
北海道江別市出身。札幌南高、大阪大学卒。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。平成17年10月弁護士登録(東京弁護士会)。沖縄弁護士会を経て、平成28年から札幌弁護士会所属。 居住地(選挙区)で国民の一票の価値が異なる問題についての選挙無効訴訟に関与している。

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