スマートフォン向けアプリ「赤ちゃん名づけ」を提供するリクルーティングサービスが、2016年上半期のキラキラネームランキングを発表した。1位は「碧空(みらん、あとむなど)」、2位は「星凛(きらり、あかり)」、3位は「奏夢(りずむ、など)」だった。アクセス数が多かったキラキラネームをランキング化している。
親としては、「オンリーワンであってほしい」などと願って個性的な名前をつけるのかもしれない。しかし中には、キラキラネームをつけたことを後悔している親もいるようだ。
ネット上のQ&Aサイトには、産後のマタニティハイで子どもに「美楓(みはる)」という難解な読み方の名前をつけたが、周囲から「読めない」と言われたり、名前が原因で子どもがいじめられたため、改名をしたいという相談が寄せられていた。
子どもにキラキラネームを付けて後悔している、という理由で、親がすぐに改名をすることができるのか。また、どのような手続きが必要なのか。今田健太郎弁護士に聞いた。
●「いったん付けた名前を変更するのは簡単ではない」
「おなかに赤ちゃんがいることが分かったとき、親には、『男の子だったら...女の子だったら...』と、わくわくしながら名づけを考える至福の時間が与えられます。もっとも、『人と同じ名前は嫌だ』との思いから、実に個性的な名前を付けた場合、子どもが成長するにつれ、周囲の反応もあいまって、後悔するケースもあるかもしれません」
名付けに後悔しているという理由で、親が子どもの名前を変えられるのだろうか。
「いったん付けた名前を変更するのは簡単ではなく、名の変更に正当な理由があると家庭裁判所が判断した場合にしか、認められません。
正当な理由の例としては、(1)戸籍の表記とは違う名(変更したい名前)を長年、『通名』として日常的に使っており、定着した通名に代わって、戸籍上の名の使用を強いることが酷である場合(永年使用のケース)や、(2)名が珍奇・難解すぎる場合、などが挙げられます。
(1)の永年使用の期間としては、成年者の場合で7年前後、未成年者の場合で5年前後、幼児の場合で3年前後にわたる通名の定着が必要との見解があります。
また、(2)の難解なケースで変更が認められたものとしては、『芲子(はなこ)』や『州璋(くにあき)』などがあります。
今回、ネット上のQ&Aサイトに相談が寄せられた『美楓(みはる)』という名前の場合には、(2)の難解なケースに該当するかにつき、家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。なお、性同一性障害の場合には、比較的容易に、名の変更が認められると解釈されています」
●改名をするための手続きは?
名前を変更するためには、どのような手続きが必要なのか。
「改名をするための手続としては、住所地の家庭裁判所に対し、名の変更の申立てを行うことになります。難解な読みを理由とする場合には、申立書などの書面審査により、許可するかどうかの審判がなされることが多いようです。
他方、永年使用を理由に改名する場合には、書面審査だけでなく、申立人に対する照会や、関係機関への問い合わせなどを行います。その上で、長期間にわたって通名を使用しており、戸籍上の名を強制することが酷かどうか、ということが判断されます。
名を変更する許可がなされた場合、その許可審判書謄本を添付して、市区町村役場に名の変更届を提出することによって、名の変更の効力が生じます」
家庭裁判所への申立て、審査、照会...と、名前変更にはなかなか手間がかかるようだ。
「いずれにしても、名を変更することは容易ではありません。
子の幸せを願って付けたはずの名によって、子が不幸になることがないよう、周囲の冷静な意見も参考にしながら、素敵な名づけをしてもらいたいと思います」