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引越「見積もりサイト」を使うと「電話地獄」に陥るーー本当にそうなのか、調べてみた
4時18分の着信を皮切りに履歴欄は8時間でうまった。

引越「見積もりサイト」を使うと「電話地獄」に陥るーー本当にそうなのか、調べてみた

ブロガーのイケダハヤトさんが6月17日、自身のブログ(「まだ東京で消耗してるの?」)で、「電話地獄に陥るので、『一括引越し見積もり』サービスは使ってはいけない」と題した記事を投稿し、話題となった。

イケダさんによれば「実体験をもって言いますが、これは使わないほうがいいです。本当に。知らないで使うとひどいことになります」という。ブログでは、一般の人たちのツイッター投稿をもとに「電話が1日ひっきりなしに鳴る・・・」といった実例を紹介。なかには深夜帯の「電話攻撃」を指摘した人もいた。

実態はどうなっているのかーー。弁護士ドットコムニュースの記者は午前4時すぎ、検索サイトで「引越見積もり」と入力。上位にあがった某引越見積もりサイトに登録し、実態を調査した。

●「××社早朝受付センターの××と申します」

見積もりサイトでは、氏名、電話番号、メールアドレス(いずれも必須)のほか、引越前・後の住所、居住者数、引越予定日、家財道具数などを入力していく。家族構成を含めた詳細な個人情報の入力に抵抗感を覚えつつも、登録を完了した。ここからいっせいに、サイト側が抽出した「10社」に対して見積もり請求がおこなわれるようだ。

すると、登録完了から3分後、ほぼいっせいに4社から「××社でございます」などの社名入りタイトルでメールを受信。定型文とみられる文面に、あまり参考にならない「概算金額」が書かれていた。

そして、登録完了から4分後、ついに携帯へ見知らぬフリーダイヤルからの着信があったのだ。「××社・早朝受付センターの山田(仮名)と申します」と業界大手のA社を名乗った若い男性は「2、3分だけ大丈夫でしょうか」と切り出した。

「お客様の予定日は混雑が予定されているので、1日でも早くお見積もりをお願いしています」と不安を駆り立て、「私どもは、いつもお見積もりは実際にお宅へお邪魔し、出させていただきます。本日もちょうど近くで待機しているスタッフがいるので、40分前後お時間をいただけないか」と矢継ぎ早に話を進めようとする。

●「私ども、24時間動いております」

そして、次のようなやりとりをした。

ーーメールや電話では見積もりは無理なのですか?

見積もりサイトは、見積もり依頼をかけるだけのサイトなので、お客様の場合、6〜35万円まで広く出てしまいます。メールや電話だと、当日の追加料金発生のトラブルもあるので、ご訪問のやり方をとらせていただいています。

ーー訪問の時間は何時ごろになるのでしょうか?

平日、土日、関係なく午前9時から午後5時でやらせていただいています。

ーーそれにしても、午前4時台の早朝の時間帯の電話は驚きました。非常識な時間帯でないかと思うんですが・・・。

私ども、24時間動いており、見積もりサイトからの受付を確認した直後、こうしてお電話をさせていただいております。申し訳ありません。

ーーいつも、こうした時間帯にかけるのですか?

そうです。申し訳ありません

●「いろいろな方がいますので、フレキシブルに対応します」

記者の迷惑そうな対応をものともせず、しつこく訪問日を決めようと食い下がる担当者を「家族の都合を確認しないと」などといってかわし、通話は5分ほどで終了。電話受付は24時間対応するのに、実際の訪問は9〜17時という、およそ働く世帯を考慮しない時間帯の落差が印象的だ。

結果としては、登録を完了してからの5分間で、電話1件(4分後に着信)、メール5通(3分後に4社、5分後に1社)を確認した。「言われたほどでもなかったな・・・」。そう安堵していた午前8時をすぎたころだった。噂どおりの「メール&電話攻撃」が幕をあけたのである。

記者の携帯履歴(写真)をご覧いただきたいのだが、8時1分に着信したB社を皮切りに、12時30分までに9社から着信があった。いずれも「本日ご自宅近くをまわっている営業担当者が見積もりにまいります」といい、当日の夕方までの時間帯で訪問日程を強引に決めようとする。

きわめつけは、午前4時台に連絡をしてきたA社からの再度の電話だ。担当者は例によって「本日近くをまわっている・・・」と始めたため、次のようにたずねた。

ーー午前4時過ぎにそちらの「早朝対応の山田さん」から、お電話をいただいておりますが。

あ、そうでしたが。失礼しました。ちょっとこちらでは、把握ができないものですから。

ーー御社は、どういう時間帯で動いているんですか。

朝の8時から20時まで。それ以降、夜の20時から朝8時までは夜間早朝の担当者が対応しております。

ーーすごいですね。24時間ということなんですか

そうですね。今はいろいろな方がいらっしゃいますので、フレキシブルに対応させていただいております。

●「インターネットの接続サービスはいかがですか?」

また、意外な電話もかかってきた。引越し見積もりサイトの運営会社から「けっこうお電話が入っているかと思いますが、ある程度決まってきたら、こちらにお電話をいただければ、そういった電話をとめることも可能ですので」とありがたい申し出があったのだ。

しかし、目的は別にあったようで「引越し先でインターネットは接続できそうですか? いまお使いのものが使えない方もいるので、こちらが調査をして、使えないようであれば、使えるようになる接続サポートをおこないます。こちらも実際にみないとわかりませんが、キャッシュバックができるかもしれません。調査には1カ月ほどかかるケースもあるので、早めにお申し込みください」

何度聞き返しても「接続サポート」の具体的な内容はわからなかった。

今回の取材でわかったのは、共通するのは「近くをまわっている営業マンが見積もりに訪問させていただく」とする点で、「今すぐには決められない」といえば「いつならわかるのか。その時間帯に再度、連絡する」などとしつこい。

また「見積もりサイト」とはなっているが、サイト上やメールでの見積もりができるわけではない。荷物の個数などを詳細に入力したはずだが、その情報だけをもとに正確な見積額は教えられない。あくまで「見積もりを出す自宅訪問の営業マンを発注する」サイトと考えたほうがよさそうだ。

引越し見積もりサイトの利用時には「電話&メール攻撃」があることを十分に覚悟したうえでの利用をおすすめしたい。特に、「寝る直前」の見積もり発注だけは、やめたほうが無難だろう。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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