小さな子どもに襲いかかった犬を、すごい勢いで飛び出してきた猫が、体当たりで追い払う――。YouTubeに投稿されたそんな動画がネットで話題になった。動画は6月10日の時点で、すでに2200万回以上再生されている。
この動画は、アメリカ・カリフォルニア州で撮影された。子どもは足を犬にかまれてケガをしたが、動画を投稿した父親は「猫が守ってくれたおかげで、子どもは大丈夫だ」とコメントしている。
報道によると、子どもを襲ったのは、近所の家の飼い犬だったそうだ。今回のようにペットの犬にかまれてケガをする事故は、日本でもしばしばおきる。日本の法律上、そんなときの飼い主の責任は、どのように定められているのだろうか。ペットに関する訴訟事件にくわしい渋谷寛弁護士に聞いた。
●犬の飼い主に賠償責任あり
「今回のようなケースでは、犬などの動物の飼い主に、『不法行為責任』が発生します(民法718条1項本文)。
自分が飼っている動物が他人に損害を与えてしまったときは、そのために生じた損害を賠償しなくてはならないということです」
なんだか飼い主に有無を言わせぬ印象だが、どんなときでも、賠償責任が生じるのだろうか。
「いつでも必ず、というわけではありません。飼い主が『動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき』(同条1項但書)には、例外的に、責任を免れるというルールになっています。
かみ砕くと、そのような事故が起きないよう十分に注意し、しっかりとペットの管理をしていたと見なされれば、責任は問われないということです。
どんな注意・管理が必要かは、それぞれの動物の種類や性質によって変わってきます」
それでは、逃げた飼い犬が、家から離れた場所で、他人にケガをさせてしまった場合には?
「逃げ出した犬は、子どもをかむおそれがあります。犬の飼い主には、事故を未然に防ぐために、鍵のついたオリに入れる、丈夫なリードを付けるなどして、逃げないように管理する責任があります」
●ペットの管理責任は重大
犬が逃げたというのは、やはり飼い主の管理が不十分な気がするが・・・。
「そうですね。犬は逃げ出し、子どもにかみついてしまったのですから、飼い主が相当の管理をしていたとは言えません。ですから、よほどの事情がない限り、責任を免れることはできないでしょう」
損害賠償というのは、治療費のことだろうか?
「損害賠償には、足をかまれた子どもの治療費や病院に通う交通費、そして、ケガをしたことにともなう精神的慰謝料なども含まれるでしょうね」
渋谷弁護士はこのように注意を呼びかけていた。飼い主の管理責任は、かなり厳しく問われるようだ。自分の愛犬に限って・・・と考える人もいるだろうが、他人のためにも、愛犬のためにも、注意を怠ってはならないといえそうだ。