ツイッターの検索で過去の逮捕歴が表示され人格権などが侵害されたとして、男性がツイッター社にツイートの削除を求めた訴訟の上告審弁論が5月27日、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)で開かれた。
検索結果の削除をめぐっては、最高裁が2017年1月の決定で、「個人のプライバシー情報が公表されない利益と、これを検索結果として提供する理由に関する諸事情とを比較衡量して、前者が優越することが明らかな場合に削除を求めることができる」(いわゆる「明らか基準」)という判断基準を示している。
ツイートの削除について、最高裁がどのような判断基準を示すか注目が集まっている。判決は6月24日午後3時。
●裁判の概要
男性は2012年に建造物侵入罪で逮捕され、罰金10万円の略式命令を受けた。削除請求していたのは、男性の逮捕を報じる記事と引用元URLが貼られたツイート。いずれも男性の名前を引用してツイートしており、ツイッターで検索すると検索結果として表示された。
引用元の報道記事はいずれも削除されており、グーグルで男性の名前を検索しても、検索結果として表示されることはない状態だった。
争点は、いわゆる「明らか基準」がツイッターにも当てはまるのかどうか、ツイッターは最高裁決定がいう「インターネット上の情報流通の基盤」と評価できるか——だ。
一審の東京地裁は、ツイッターの役割や性質などについて整理したうえで、グーグルなど検索事業者よりも緩和した要件での削除基準を示し、ツイートの削除を認めた。
二審の東京高裁は、ツイッターは「インターネット上の情報流通の基盤」と評価したうえで、「不利益を受ける可能性は残るものの、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない」などとし、削除を認めないとする原告逆転敗訴の判決を言い渡した。
●双方の上告審弁論
27日に開かれた上告審弁論で、原告側は「そもそも『明らか基準』は、検索事業者が提供する検索サービスの特質に着目して導き出された基準で、これを検索エンジンでないツイッターに用いることは、最高裁決定が予定するところではない。ツイッターの検索機能は、インターネット上の情報全てを網羅する検索エンジンとは、情報流通において果たす役割に大差がある」と述べた。
また、原告のようにインターネット上に残る犯罪報道記事で苦しんでいる人が多数いるとして、「最高裁の判決が、更生の意思ある者に、やり直しの機会を与える端緒になるよう希望します」と訴えた。
対するツイッター社側は、「ツイッターは多角的な情報を入手する重要な手段として社会的意義を果たしている。1対1の当事者間の単純な比較衡量の事案ではない。投稿者の表現の自由だけでなく、表現行為としての側面や情報流通の基盤としての役割、インターネットユーザーの表現の自由や知る権利が十分斟酌されないといけない」などと反論した。