ツイッターの検索で過去の逮捕歴が表示され、人格権などが侵害されたとして、男性がツイッター社にツイートの削除を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(野山宏裁判長)は6月29日、削除を認めないとする原告逆転敗訴の判決を言い渡した。
一審は、ツイッターの役割や性質などについて整理したうえで、グーグルなど検索事業者よりも緩和した要件での削除基準を示し、ツイートの削除を認めていた。一審判決を不服として、ツイッター社が控訴していた。
男性の代理人をつとめる田中一哉弁護士は「『明らか』という削除基準がついたことについては不当。グーグルとツイッターの違いというのが十分に理解してもらえなかったというのが原因ではないか。グーグル検索結果の削除をめぐる最高裁判決自体が、検索事業者限定のものであることが十分理解されていないと思う」と話した。
●高裁の判断は
男性は2012年に建造物侵入罪で逮捕され、罰金10万円の略式命令を受けた。今回削除請求していたのは、男性の逮捕を報じる記事と引用元URLが貼られたツイート。いずれも男性の名前を引用してツイートしており、ツイッターで検索すると検索結果として表示された。
現在、引用元の報道記事はいずれも削除されており、グーグルで男性の名前を検索しても、検索結果として表示されることはない状態だった。
高裁判決は、ツイート削除の判断基準について、
(1)事実の性質および内容
(2)事実が伝達される範囲と申立人の具体的な被害の程度
(3)申立人の社会的地位や影響力
(4)ツイートの目的・意義
(5)ツイートが掲載された時の社会的状況とその後の変化
(6)その事実を記載する必要性
など、事実を公表されない法的利益と、ツイッターの公表が継続される理由とを比較衡量した結果、「事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」に削除が認められるとした。
その上で、今回の逮捕事実に関するツイートについて、男性の逮捕事実は「公共の利害に関する事実にかかり、公益目的に出たもの」と指摘。
ネット上の実名報道記事はすでに削除されており、ツイッター検索の利用頻度はグーグル検索ほど高くないこと、他の検索サイトでは投稿記事の検索ができず具体的な不利益を受ける可能性が低下していることなどと比較し、「不利益を受ける可能性は残るものの、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない」と結論づけた。
検索結果の削除をめぐっては、最高裁が2017年1月の決定で、検索結果を表示することの社会的な意義などと比較したうえで、「プライバシー保護の利益が優越することが明らかな場合に削除を求めることができる」という判断基準を示している。