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2021年06月24日 11時41分

Winnyで1万曲入手→iPodに入れて販売…起業家の武勇伝、法的な問題は?

Winnyで1万曲入手→iPodに入れて販売…起業家の武勇伝、法的な問題は?
宮下崇『連続起業家のTHEORY』

今年4月に刊行された起業家・宮下崇さんのビジネス書『連続起業家のTHEORY』に、過去の〝違法行為〟が書かれていると話題になっている。高校時代、ファイル交換ソフト「Winny」などを使って、お金を稼いでいたというのだ。

宮下さんは「もちろん違法行為であり、今なら絶対にやらない」「(当時は)著作権法のことなどよく知らなかった」といった説明を交えつつ、次のように記している。

「人気アーティストの新譜をダウンロードし、CD-Rに焼き、ラベル印刷をし、歌詞カードまで作って、ネットオークションで販売するようになった」(12頁)

「P2Pで楽曲のデータを集め、オークションで『J-POP1万曲入りiPod』『アニソン1万曲入りiPod』などを売り始めた」(14頁)

特にiPodのほうは、1個あたり2万円の利益が出たという。ただし、数カ月ほどすると、著作権の問題からオークションサイトでの出品ができなくなったそうだ。

「『自分のアイデアでお金を稼ぐことの面白さ』と『ビジネスにおいて、法律を守ることの大切さ』を教えてくれた」(15頁)

と振り返っている。

●著作権侵害は、刑事責任を問われる恐れも

当時、ファイル交換ソフトを使ったダウンロード自体は違法ではなかったものの、宮下さんも認めているようにダウンロードした楽曲の販売は、著作権侵害になる。

著作権にくわしい岡本健太郎弁護士は当時について次のように説明する。

「本人が利用するための音楽のダウンロードや保存、ラベル印刷及び歌詞カードの作成であれば、私的使用のための複製(著作権法30条1項)として、著作権者の承諾なく実施可能となり得ます。

【注:現在は、違法アップロードされたものと知りながら、音楽、映像その他の著作物をダウンロードすることは違法とされている】

ただ、宮下氏の行為は、販売目的であるなど、私的使用の範囲を超えるため、上記の権利制限規定の適用はなく、複製権や譲渡権の侵害となり得ます(同法21条、26条の2)。

同様に、宮下氏の行為のうち、音源の無断での複製及び販売についても、上記の権利制限規定の適用はなく、複製権や譲渡権の侵害となり得ます(同法95条の2、96条、97条の2、102条1項)」

これらの行為は刑事責任を問われる可能性がある。

「複製権、譲渡権などの著作権や著作隣接権の侵害行為は、刑事罰の対象となり得ます。法定刑は、当時は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金であり、併科もあり得ます(同法119条1項)」

【注:現在の法定刑は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(併科あり)。また、現在は、著作物の違法ダウンロードも刑事罰の対象となり得る(同法119条3項)】

●刑事は時効成立も、民事責任はまだの可能性

そんな行為を公表しても大丈夫だったのだろうか。書籍によると、宮下さんは1986年生まれ。iPodの販売などは高校時代の行為とされているため、長く見積もってもWinnyが公開された2002年5月~2005年3月の間のできごとと考えられる。

「10年以下の懲役の罪については、公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。また、上記の著作権等侵害罪は当時、 親告罪です(著作権法123条1項)。

【注:現在では、著作権等侵害罪は、一部非親告罪化されている(同法123条2項)。また、違法ダウンロードの罪も親告罪である】

公訴時効期間については、何度か法改正がなされていますが、いずれにせよ、本件については、公訴時効が成立しているように思われます」

ただし、民事の時効は理屈上、まだ成立していない可能性がある。

「著作権や著作隣接権の侵害行為は、不法行為による損害賠償請求の対象となり得ます。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ってから3年、不法行為時から20年です(民法724条各号)。

【注:2020年の民法改正前も、各期間は同様であるが、20年の期間制限は、消滅時効(時効の完成猶予があり得るもの)ではなく、除斥期間(期間の経過に伴い、確定的に権利が消滅するもの)とされていた】

宮下氏の行為は、2002年5月から2005年3月ころのようですが、被侵害者(例:作詞家・作曲家、JASRAC/NexTone、実演家、レコード会社)が、宮下氏の侵害行為を知ったのが書籍の出版以降であれば、損害賠償請求権は時効消滅前とされる可能性はあります」

とはいえ、実際に損害賠償を請求されうるかというと、それも難しそうだ。

「裁判上、宮下氏に対する損害賠償請求が認められるには、権利侵害や損害(例:実際の曲目、曲数、販売回数)に関する主張立証が必要と思われます。

宮下氏の書籍の記載のみでは、これらの点は不明確ですので、それ以外の具体的な証拠がなければ、被侵害者は、宮下氏に対して損害賠償請求を行うことは容易でないように思われます」

●〝武勇伝〟のリスク

本書の記述をもって、宮下氏に何らかの法的措置がとられることは考えづらいが、Winnyをはじめとしたファイル交換ソフトは当時、社会問題になり、著作権法の改正にもつながった。そうした行為を〝武勇伝〟のように語ってしまったことが反感を招いてしまったようだ。

なお、同書の記述は6月2日に投稿されたツイートをきっかけに広く知られることになり、ニュースサイト「ねとらぼ」が6月8日、著作権上の問題点などについて記事にしている

同書の奥付では、発行は幻冬舎メディアコンサルティング。ただし、ウェブサイト上では、自費出版の幻冬舎ルネッサンス新社の制作実績となっている。

弁護士ドットコムニュースは、発行元の幻冬舎メディアコンサルティングに6月14日、コメントを求めた。18日、21日、22日にも連絡し、伝言も頼んだが、一貫して担当者が席を外しているとのことだった。

取材協力弁護士

岡本 健太郎(おかもと・けんたろう)弁護士
骨董通り法律事務所。弁護士・ニューヨーク州弁護士。神戸大学大学院客員准教授。「著作権Q&A」(宣伝会議・2018年10月から連載中)、「エンタテインメント法実務」(編著。弘文堂・2021年6月発刊)など。

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