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2021年06月21日 21時35分

【新・弁護士列伝】「弁護士は料理人と似ている」徹底した聞き取りで材料を揃え、戦略を作り上げる 好川久治弁護士インタビュー

【新・弁護士列伝】「弁護士は料理人と似ている」徹底した聞き取りで材料を揃え、戦略を作り上げる 好川久治弁護士インタビュー
好川久治弁護士

弁護士ドットコムニュースでは、一般の方々に弁護士をもっと身近に感じていただくために、学生による弁護士へのインタビュー企画をおこなっています。

今回お話を伺ったのは、好川久治弁護士(ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所)です。 大学を卒業後、保険会社の法務部に配属され、法律を仕事に生かすことの面白さを知ったという好川弁護士。学生時代に挑戦した司法試験に再チャレンジし、弁護士に転身します。これまで、依頼者一人一人の状況に合った戦略を駆使して、様々なトラブルを解決に導いてきました。

インタビューでは、弁護士を目指した理由や、印象に残った事件、弁護士という仕事の魅力などについてお話いただきました。

紆余曲折を経て弁護士に

−弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。

昔から刑事ドラマや法廷ドラマを見ることが好きでした。貧乏事務所の弁護士が、「なぜ1日の大半を事件に費やせるんだろう」「なぜ他人のためにこんなに命がけでがんばれるんだろう」。一生懸命な主人公に漠然とした尊敬の念がありました。

弁護士を目指したのは、大学で法学部に入学したことがきっかけです。せっかく法学部に入ったのだから、法曹の世界にも興味を持とうと思い、勉強をはじめました。「必ず弁護士になりたい」という強い決意や信念などはなく、周りが法律家を目指して勉強をしていたので、その雰囲気に流されたところもあります。

私の大学時代はちょうどバブル期にあたります。遊ぶことに忙しくて、司法試験予備校に通ってはいましたが、あまり勉強に身が入っていなかったと思います。大学4年生のとき、就職するか司法試験の勉強を続けるか迷いました。周りはほとんど留年して弁護士を目指す環境。私は「このまま就職して自分は社会人としてやっていけるのかな」と不安がありました。せっかく司法試験の勉強を続けてきたので、あと1年頑張ろうと、親に頼んで留年させてもらい司法試験を目指しました。

ところが、留年までして勉強を続けてみたものの、自分が弁護士になるイメージが持てなかったんです。社会のことを何も知らない自分が弁護士になんてなれるのか疑問でした。当時、就職が売り手市場で、会社に入れば終身雇用でやっていける時代。私も留年した時に大手の保険会社に内定をもらっていました。もともと弁護士に絶対になりたいという強い信念を持っていたわけではありません。社会人になって少し社会の空気に触れてみてもいいかなと思い、方針を転換して、保険会社に就職しました。

保険会社では法務部門に配属されました。学生の頃は知識を吸収する受け身な法律の勉強でした。会社に入って求められたのは、実務で役立つ生きた法律知識です。自分の頭の中だけで構成されていた法律の世界が、実務で役立つことは、新鮮な感覚でした。学生の頃に味わえなかった勉強の楽しさを感じて、スキルアップのために、もう一度、法律の勉強を始めました。

勉強をするうちに、どうせ法律を学ぶなら、頂点である法曹界を目指したくなりました。司法試験に受かれば何か変わるんじゃないか、という漠然とした期待感や希望もあり、再び弁護士を目指しました。

−次に、注力分野および、その分野に注力している理由を教えてください。

専門分野は特にありませんが、これまで1000件を超える事件処理に携わってきましたので、ほとんどの分野の事件は扱えます。現在は、交通事故やスポーツ事故、友人間のトラブルなど損害賠償に関係する事件を多く扱っています。宅建の資格を持っているので、不動産の売買や明け渡しなどの案件も多いです。最近は賃料の増額請求、減額請求の裁判が増えています。

一般民事の中では、離婚案件が比較的多いです。離婚する夫婦は年間20万件以上。離婚は当事者だけの問題ではなく、子どもや親族も関わってきます。そうすると、年間100万人くらいの人が離婚トラブルに巻き込まれている計算になります。どの弁護士も離婚案件を多く扱っていると思います。10件くらい同時に抱えている人もいます。

全体としては、企業法務の案件が全体の3割近くを占めています。相談内容は従業員の労働環境や契約書のリーガルチェックが多いです。最近はコロナ禍で在宅勤務にかかる費用の負担や、勤務時間の管理が新しい問題となっています。

依頼者から事実をいかに引き出すかが弁護士の仕事

−個人の方は重大ではないと考えていても、実は弁護士に相談したほうがいい事例はありますか。

そもそも、トラブルに遭っても、「弁護士に相談する」という発想を持っていない方がほとんどではないかと思います。今は、インターネットで調べれば大抵の知識は吸収できます。インターネットの知識だけで解決できる問題は重大な問題ではありません。弁護士に相談しなければならない問題はネットの知識で解決できない問題です。

私もインターネットで情報発信をしていた時期がありました。インターネットだとどうしても一般論の情報発信になってしまうんです。個々の事件処理が必ずしも一般論に当てはまるとはかぎりません。一人一人と向き合って事実を聞かないと、本当に必要なことは教えられないんです。

弁護士の仕事は、依頼者からどれだけ事実を引き出せるかだと思っています。事実のうちの半分しか引き出さずに問題解決をしようとしたら、間違った方向に進んでいきます。埋もれている事実を色々な観点から引き出すことが大切です。すべての事実を引き出して初めて、個々の問題に即した最適のアドバイスができると思います。

インターネットの一般論はよくあるケースの解決で役立っているものです。個々の依頼者が抱えている事件の解決のためには、参考程度にしかなりません。すでに紛争化してしまっているのであれば、弁護士に相談した方がいいと思います。

自分に問題が起きたとき、弁護士に相談する意識があると、初期段階で相談に来ることができるんです。早めに弁護士に相談すれば、手遅れにも紛争にもならないかもしれません。少しでも疑問を感じたときに、気軽に相談できる弁護士を見つけておくと心強いと思います。

−相談者はどれくらいの年代の方が多いですか?

多いのは20代から50代ですね。相談内容は年代によって様々です。例えば、子どもがいる30代の方からは、子どものいじめ問題や交通事故、離婚に伴う子供の親権に関する相談などを受けます。50代になると兄弟間で親の財産を巡って紛争が起こることもあります。70、80代の方は遺言の相談が多いです。

人生は何度も節目があります。学生になって、社会人になって、結婚して子どもができて、親の介護が必要になって、終焉を迎える。節目節目でどうしても何かしらの出来事は起こります。節目の出来事がトラブルにつながった場合に、弁護士に依頼しようという考えが浮かぶようです。

無免許運転の再犯事件、情状証人に名乗り出た意外な人物

−弁護士として活動してきた中で、印象的だったエピソードを教えてください。

色々なことがありすぎて1番を決めるのは難しいです。

印象に残っているのは、ある出入国管理事件です。不法滞在で捕まった双子の中国人姉妹の妹さんの事件を、紹介で受けました。彼女は前科持ちでした。何年か前に出入国管理法違反で執行猶予付きの有罪判決を受けて強制送還されていたんです。その人がまた不法入国したということで、私が弁護を担当しました。

彼女からきちんと事実を聞き出し、資料を検討していくと、前回の事件はお姉さんの身代わりとなって、人違いのまま有罪判決を受けていたことが分かったんです。つまり妹さんは前科がなく、初犯だったということです。本来であれば、前科ありで重い判断が下されるところでしたが、審理の途中で、身代わりで罪をかぶっていたことがわかり、初犯と同等の判決が下された事件です。

もう一つ印象に残っているのは無免許運転の再犯事件です。刑事事件は無罪を争うだけではありません。有罪であっても情状酌量を求める弁護をします。情状証人を立て、社会復帰した時に再犯を犯す可能性がないことを主張し、刑が軽くなるようにします。

この事件では、無免許運転の再犯で捕まった被告人の情状証人に名乗り出てくれた人がいました。土木会社の社長で、「刑務所から出てきたら雇う」と言ってくださったんです。その人に法廷で証言してもらうことになりました。

社長との事前の打ち合わせ中に「実はこういう人間なんだけど」と言われたんです。よくよく聞くと、「ヤクザの親分」だというんですね。ヤクザを情状証人に呼んだことはなかったので躊躇しました。社長は、いわゆる暴力団というより、人助けをする信念を持っている昔ながらのヤクザ。情状証人として法廷に立ってもらい、被告人が刑務所から出たら自分の会社で雇うと話してもらいました。情状証人のおかげもあり、減刑に。弁護は成功しました。

社長は法廷で、屈強な大柄の子分2人を連れて傍聴席に座っていたんです。証言台に立ったときも、バーンと足を広げて、いかにもヤクザっぽい風体で証言されて少し焦ったことを覚えています。

他にも印象に残っている事件は色々あります。別の事件では、被告人の無罪を証明するために、池袋界隈を歩き回ってひたすら調査を続けました。弁護士は座って仕事をするより、とにかく歩いて証拠を探していくことが多いです。苦労した仕事の方が印象に残りやすいですね。

−弁護士の仕事の魅力を教えてください。

魅力はたくさんあります。やりがいという一言では言い尽くせないですね。弁護士って料理人みたいなところがあるんです。真っ白な状態から、相談者が語る事実を聞き、そこから考えられる解決策を考える。解決策を相談者に説明して、納得してもらったうえで、本人の希望を聞きながら戦略を練る。戦略に沿って手続きをして、うまくいかなかったら別の戦略を立てる。自分で全て料理していくことが醍醐味だと思っています。やりがいもあるし、結果的にうまくいくと相談者から感謝される。弁護士をやってよかったと実感が湧きます。

「先生に依頼してよかった」と言っていただけた時の喜びは他では味わえません。相談者にとっては、お医者さんに手術してもらい、助けてもらった感覚と似ているかもしれないですね。事件が終わって何十年も経っているのに、「先生と巡り合わなかったらどうなっていたかわかりません」と言ってくださる方が何人もいらっしゃいます。今でも連絡をくれるのはすごく嬉しいですね。

「これって法律問題?」迷ったときこそ弁護士に相談を

−今後の展望について、伺いたいです。

私は20年以上弁護士をやっています。次の節目は30年。その頃にはもう還暦なんです。事務所の運営としては、弁護士の体制を考えないといけないと思います。今、事務所には弁護士が6人います。そのうち2人は70歳を超えていて持病もあるんです。2人が一気にいなくなると事務所の弁護士が4人になってしまいます。4人で今の体制を維持するのは難しい。残された4人で経費を分担して新しい仕事を集めるか、新しい人を入れるか色々と検討しています。事務所運営は、今一番関心が高い問題です。

もう一つ関心がある問題は、民事調停官についてです。私は民事調停官として、非常勤で週1回裁判官の仕事をしています。任期は1クール2年で、それを2回で合計4年。今は2年目です。もしかしたら、民事調停官の任期が終わったら裁判官になる可能性もあります。ここ20年くらい、弁護士会は、法曹一元をめざして弁護士の任官に力を注いでいるんです。

弁護士側としては、裁判官になると事務所をたたむことになり、依頼者に迷惑をかけてしまうので、希望する人が少ないんです。他の弁護士と共同で事務所をやっていると、後任者をどうするかという問題も生まれるので難しいところです。とはいえ、裁判官も1つの道だと思っているので、検討しています。

弁護士として、新しい分野に進出することはあまり考えていません。依頼された案件に一生懸命取り組めば、依頼者からも感謝され、自分のスキルアップにもつながる。「なるようになる」と思っています。依頼された事件を一生懸命手がけることを通じて、事務所の運営も自分の仕事の内容も良い方向に動いていくと思うので、しばらくは同じスタイルで続けていきたいです。

−最後に法律トラブルを抱えて悩んでいる方へ、メッセージをお願いいたします。

トラブルを抱えて悩んでいても、弁護士に相談する発想を持たない方が多いと思うんです。消費者トラブルであれば国民センターに、労務問題であれば労基署に相談したり、専門家ではないけれど物知りな人に相談したりすることはあっても、なかなか、弁護士に相談しようとはならないと思います。

弁護士は、法律を独占的に扱えて、法律を自由に料理できる職業です。トラブルに遭ったら、ぜひ弁護士に相談する発想を持っていただきたいですね。お金がかかるからと遠慮する方もいるかもしれませんが、無料相談もあります。間違った方向に問題が進んでしまった場合、結果的に何十倍、何百倍の損失を被る可能性があります。弁護士に相談することを選んだ方が安く済むかもしれません。

自分に合った弁護士を選ぶことも大切です。紹介で弁護士にたどり着くとなかなか断れないと思います。弁護士によって考え方や方針も違いますので、依頼する事件の方向性や結論が変わってきます。色んな弁護士に、お金を払ってでも相談したほうがいいと思います。仕事のスタイルも人それぞれです。即決するのではなく、複数の弁護士に相談して、相性がいい弁護士を探してほしいです。

「こんなこと相談しても笑われるかもしれない」「弁護士に相談する問題なのか」と迷うかもしれません。私は、わからないからこそ弁護士に相談してほしいと思っています。法律問題ではなくて別の問題であれば、方向転換して、その問題に合った解決策を探せば良いだけです。とにかく気軽に弁護士に相談してもらえればなと思います。

取材協力弁護士

好川 久治弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。

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