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ホームページに「殺すぞ」とコメント投稿・・・翌日「削除依頼」しても犯罪になる?
ネット上に書き込んだ脅迫コメントを削除依頼しても、なかったことにはできない!?

ホームページに「殺すぞ」とコメント投稿・・・翌日「削除依頼」しても犯罪になる?

兵庫県尼崎市に住む漫画家が10月下旬、脅迫の疑いで兵庫県警に逮捕された。報道によると、今年6月の尼崎市議会選に立候補した男性(日本維新の会公認)のホームページのコメント欄に、「お前らの戦争にわしらも巻き込んだら殺すぞ。大阪都構想に尼崎を入れるな」などと書き込んだのだという。

この漫画家がコメントを書き込んだのは、選挙の約2カ月前の4月7日。だが、すぐに反省したようで、その翌日の4月8日、ツイッターでは次のように書いている。「勢いでコメント欄に『殺すぞ』と書き込んだけど、さすがにまずいかと思って、本人に電話して削除頼んだのだが、まだ削除されてない。いつまでも晒し続けるつもりなのかな?」

このツイートの内容が事実だとすれば、本人は不適切な内容を書き込んだことを自認し、翌日には相手方に電話で削除要請までしていたことになる。そうした場合でも、半年後に脅迫容疑で逮捕、となってしまうものなのだろうか。ネット上での発言問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●脅迫が「既遂」になったら、撤回してもなかったことにはできない

「刑法でいう『脅迫』は、人に恐怖心を起こさせるような加害予告をいいます。ホームページのコメント欄に『殺すぞ』と書き込むことは、脅迫に当たるとされるケースが多いでしょう。

脅迫は、相手に告知された時点で『既遂』(犯罪の実行が完了)になります。つまり、書き込んだだけでなく、その内容を相手が知ったときに既遂となります。

そして、いったん既遂に達した罪は、仮にその言を撤回しても既遂に達している以上、なかったことにはできません。そのため、脅迫罪として逮捕されるということも当然あり得るということになります」

そうすると逮捕は必然だったのだろうか。

「こうした書き込みをすれば、常に逮捕されるというわけではありません。人を逮捕するためには、原則的には裁判所の令状(許可)が必要です。

裁判所の許可を得るためには、その人が罪を犯した可能性に加え、(1)証拠を隠す可能性か、(2)逃亡する可能性のどちらかが必要です。この場合の『可能性』は、『それを疑うに足りる相当な理由』があれば大丈夫です」

今回は、どうだったのだろうか?

「逮捕の経緯が詳細に報道されているわけではないので、確たることは言えません。ただ、逮捕されたという事実は重いと思います」

清水弁護士はこのように述べたうえで、報道などで明らかになっている範囲で、事件について考察してくれた。

「本件では、本人が書き込みをしたことを認めているので、『罪を犯した』可能性があるとはいえます。

ただ、(1)の証拠を隠す可能性については、『書き込み』を印刷したり写真に撮って、捜査機関が証拠を残すことは十分可能ですし、アクセスログなども本人以外の機関から取得できます。証人にプレッシャーを与えようとする(証人威迫)といった問題はなお残りますが、基本的に(1)は認められないのではないでしょうか。

(2)の逃亡する可能性があったかどうかは、報道からだけでは窺い知れませんが、あると判断された可能性はあります。一般論ですが、たとえば警察からの呼び出しを何度も無視しているようなケースでは、逃亡の可能性があると判断されることがあります。なお、選挙がらみの事件だと比較的逮捕に至るケースが多いように思います」

このあたりの判断は、かなりケースバイケースなのだろう。

清水弁護士は「ネットに気軽に書き込んだことが、他人の権利を侵害している、というのはよくあることです。ネットに何か投稿する際は、一呼吸置いてから書き込むようにするべきではないかと思います」と注意を呼びかけていた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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