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「自転車2人乗り」絶対ダメ! 荷台の同乗者が落下して「重過失傷害」となることも
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「自転車2人乗り」絶対ダメ! 荷台の同乗者が落下して「重過失傷害」となることも

埼玉県川口市で9月下旬、自転車の荷台に座って2人乗りをしていた女性(26)が落下し、意識不明となり、自転車を運転していた男性(38)が重過失傷害の疑いで逮捕されたと報じられている。テレビ朝日の報道によれば、運転していた男性は「急に軽くなったので振り返ると、女性が道路に倒れていた」と話しているそうだ。

自転車の2人乗りについて、法律はどのように定めているのだろうか。荷台に乗った人が望んで乗ってきた場合であっても、事故にあった場合には、運転者の責任になるのか。西村裕一弁護士に聞いた。

●どんな罪になる?

「自転車事故に関する刑事上の責任ですが、自転車も道路交通法において、『軽車両』として取り扱われています(道路交通法2条11号)。したがって、自転車を運転するに当たっては、道路交通法をはじめとする交通法規の適用があります。

そして、自転車の2人乗りについては、道路交通法57条2項で交通の安全を図るために公安委員会で自転車の乗車人数を制限することができると規定し、この規定を受けて、各都道府県が『道路交通法施行細則』を定めています。

今回事故のあった埼玉県も細則を定めており、自転車の2人乗りは原則禁止です(細則8条)。他の都道府県も基本的には同様の規定を定めています。この違反については、道路交通法121条1項7号により2万円以下の罰金又は科料を科すとされており、こうした罪も重過失傷害罪以外にも問題になりえます(これは今回の事案のように事故を起こしていないケースでも適用されます)

また、自転車は免許がなくても運転できる身近な乗り物とはいえ、自転車を運転する際には、自動車やバイクなどと同じく、事故により他人をけがさせないように注意して運転する義務を負っています」

今回の事案での事実関係はわからないが、仮に、落ちた人が「荷台に乗せて欲しい」と言ってきたような場合でも、罪に問われるのだろうか。

「好意同乗(荷台に乗った人が望んで乗ってきた場合)であっても、結果として自転車走行中に女性を誤って落下させてしまい、自損事故という形で他人を傷つけていることには変わりありません。

そこで、今回のケースでも、運転者に重過失傷害罪が問われているわけです(重過失傷害は単純な過失傷害罪と違って、被害者の申告が不要な犯罪です)。そして、落下した女性が意識不明の重体という非常に重いけがを負っていることもあって、逮捕にまで至ったものと考えられます。

なお、荷台に女性が望んで乗ってきたという事情は、重過失傷害罪の成立には影響はなく、量刑を判断する際の事情として考慮されるにすぎません。重過失傷害罪は、業務上過失致傷罪と同じく、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

さらに、今回の事案では、被害者が重症ということもあり、運転者が今後、民事上高額な賠償責任を負う可能性も十分にありえます」

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西村 裕一
西村 裕一(にしむら ゆういち)弁護士 弁護士法人デイライト法律事務所北九州オフィス
福岡県内2カ所(福岡市博多区、北九州市小倉北区)、東京、大阪にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。自転車事故も含め、年間100件以上の交通事故に関する依頼を受けており、交通事故問題を専門的に取り扱っている。

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