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酔っ払って「道路で寝込む人」車にひかれる死亡事故あいつぐ――運転手の責任は?
写真はイメージ

酔っ払って「道路で寝込む人」車にひかれる死亡事故あいつぐ――運転手の責任は?

飲酒などで道路に寝てしまった人が、車にひかれるという事故があいついでいる。警察庁によると、全国の路上寝込み(座り込み・徘徊を含む)の交通死亡事故は例年120件ほど起きており、2014年には122件あった。

東京都内では、路上寝込みによる交通事故で亡くなった人が、2014年は5人だったが、2015年は10人に増えた。こうした状況から、警視庁は今年1月から3月まで、飲食店の客に向けて路上で寝込まないように呼びかけるとともに、ドライバーに対して「路上寝込み」に注意を払うよう促すキャンペーンを展開している。

だが、ドライバーがどんなに注意していても、道路で寝込んでいる人をひいてしまう事故は、避けられない場合があるような気がする。どんなときでも、事故を起こしたドライバーは責任を問われるのだろうか。交通事故にくわしい山田訓敬弁護士に聞いた。

●予見可能性があれば「有罪」になるケースも

「道路で寝ている人をひいて、死亡させてしまったドライバーは、刑事責任として、自動車運転過失致死罪や道路交通法違反の罪に問われる可能性があります」

山田弁護士はこのように述べる。どんなケースでも、刑事責任は問われるのか。

「具体的な事情・状況によって、結論が変わります。無罪とした判例もあれば、有罪とした判例もあります。

まず、自動車運転過失致死罪が成立するには、ドライバーに『過失』が認められる必要があります。過失が認められるには、人が道路で寝ていることの『予見可能性』がなければなりません。さらに、予見できても、ひいてしまわないように回避できたこと(回避可能性)が、いえなくてはなりません。

たとえば、歩行者がめったに横断しないような幹線道路で、被害者が反対車線で跳ね飛ばされて、その結果、中央線付近に横たわった状態になっていたところを車でひいてしまったという事案がありました。

このケースで、裁判所は『予見可能性がない』として、自動車運転過失致死罪について無罪と判断しました(ただし、被害者をひいてしまった後に救護しなかったことで、道路交通法違反には問われています)」

一方で、有罪になった判例はどんなケースだろう。

「罪に問われたドライバーは被害者をひいてしまったが、その後、同じ現場を走行した数台の後続車は、前と同じ状態の被害者を避けていたというケースがありました。

こちらについて、裁判所は、先行車のドライバーに『予見可能性があった』として、過失を認め、自動車運転過失致死(当時は業務上過失致死)罪が成立するとしました。

いずれにしろ、道路の状況や他の運転者の状況など、さまざまな事情を考慮して判断されます」

●具体的な事情によって「過失割合」は変わる

では、民事責任はどうなるのだろうか。

刑事責任と同じように民事でも、ドライバーは過失が認められると、民法709条(不法行為)もしくは自賠法3条にもとづく損害賠償を請求される可能性があります。

ただし、交通事故では、被害者にも落ち度がある場合が少なくないので、損害賠償額の算定にあたっては、被害者と加害者の落ち度の割合が考慮されます。

交通事故の場合、被害者と加害者の落ち度の割合は、昼間の場合が基本『3:7』(被害者が3割、加害者が7割)、夜間の場合が基本『5:5』(被害者が5割、加害者が5割)とされます。これを過失割合といいます。

たとえば、被害者に1000万円の損害が認められるとしても、被害者の過失割合が3割とされると、慰謝料は700万円に減ってしまうということです。

ただ、被害者の過失が『基本』3割や5割といいましたが、実際の過失割合は、この『基本』を前提として、具体的な事情によって修正が加えられます。

周囲が明るく被害者を発見しやすかったとか、幹線道路でまさか被害者が寝ているとは考えにくい道路であるとか・・・具体的な事情で、具体的な過失割合は変わります」


山田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山田 訓敬
山田 訓敬(やまだ くにたか)弁護士 弁護士法人山田総合法律事務所
企業法務を中心に企業のトラブル解決に尽力する一方で、交通事故や遺産相続・離婚等の個人トラブルの分野にも力をいれている。特に、個人の分野では、相談者の「悩みを思い出に!」をモットーに、相談者の悩みを親身になって聞いてもらえると好評である。また、コロナ禍になってからはオンラインでの相談にも注力しており、全国から問い合わせがあっている。

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