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自転車の追突事故、当事者間で「示談成立」のはずが、あとで賠償請求された…対処法は?
yamasan / PIXTA

自転車の追突事故、当事者間で「示談成立」のはずが、あとで賠償請求された…対処法は?

示談では双方の過失を認めたはずなのに、あとになって損害賠償を請求されてしまった。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は自転車で走行中に前を走っていた車が急ブレーキをしたことで追突事故を起こしました。相手の車のリアガラスは全壊し、相談者も負傷しました。示談の結果、両者共に過失を認めて修理費や治療費もお互い相手方に求償しないことになりました。

これで解決したと思いましたが、後日相手方の保険会社から100:0で相談者に全過失があるとして損害賠償を請求されました。示談での取り決めで求償しないことになっていたはずなのにと、相談者は混乱しています。

「示談が成立していた」と相談者は考えていますが、このような場合でも損害賠償を支払わなくてはいけないのでしょうか。西村裕一弁護士に聞きました。

●問題となるのは「どのような内容の示談」だったか

ーー詳細はわからないものの、相談者としては「示談は成立していた」と考えているようです

今回のケースでは、当事者同士で示談が成立したとありますが、具体的にどのような内容のものであったのかが問題になります。

交通事故の損害賠償請求に関しては、口頭でも示談は生じます。

しかし、事故直後で被害額が具体的に明らかになっていない段階で、事故現場における「互いの修理はそれぞれでしましょう」といった程度の口頭での確認だけでは、それを示談という確定的な意思表示と評価できるか微妙です。

また、そもそもこの程度のやり取りでは「言った、言ってない」の問題が生じる可能性が高いといえます。

ーー口頭での確認程度では、裁判所が「示談」と認めない可能性もあるのでしょうか

そうです。実際に示談が成立していた場合には、裁判所が「相談者に支払義務はない」と認定する可能性はあります。

しかし、相談者の方の認識している示談の根拠が、口頭の確認程度の内容であれば、裁判所が相談者に支払義務はないと認定する可能性は低いといえそうです。

●似たケースでは「バイク:自動車=6:4」の過失割合

ーーその他、考慮しなければいけない点はありますか

仮に当事者同士で示談書という形で示談を交わしていた場合でも、自動車の側が車両保険を使用していた場合には別の問題が生じます。

すなわち車両保険を使用すると、自動車側の損害賠償請求権は車両保険の保険会社が被害者に代わって代位取得することになります。

こうなると、損害賠償請求権は当事者ではなく保険会社に権利があることになるため、示談交渉の相手は事故を起こした本人ではなく保険会社になります。

したがって、車両保険を使用したあとに示談書が交わされていたという場合にはすでに権利が保険会社側に移っているため、保険会社は権利のない者の示談は無効として損害賠償請求を起こしてくる可能性があります。

実務家が参考にする『判例タイムズ』では、前方の自動車が急ブレーキを踏んだため後続のバイクが追突したというケースで、過失割合をバイク:自動車=6:4を基本としていますので、これが一つの目安となるでしょう。

保険会社が100:0を前提に請求するということであれば、争点は急ブレーキを自動車がかけていたといえるのかどうかという点になってくると予想されます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

西村 裕一
西村 裕一(にしむら ゆういち)弁護士 弁護士法人デイライト法律事務所北九州オフィス
北九州オフィス 福岡県内2カ所(福岡市博多区、北九州市小倉北区)、東京、大阪にオフィスをもつ弁護士法人デイライト法律事務所の北九州オフィス所長弁護士。企業の顧問弁護士として、顧客対応、クレーム対応へのアドバイスを行う。

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