けたたましい「爆音」を残して、走り去っていく――。
若者たちの意識が変わって、暴走族はもはや「生きた化石」になりつつあるようだ。警察白書(2019年版)によると、暴走族(共同危険型)のグループや構成員数は、年々減少している。
一方で、グループとしての暴走族は減っているが、マフラーを改造し、うるさい音を撒き散らす自動車やバイクは、いまだに生き残っている。住宅街を切り裂くような爆音は、とても迷惑だろう。
こうしたマフラー改造は違法ではないのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。
●「保安基準」に合わない改造は違法
「自動車の安全性を確保するという観点から、『道路運送車両法』という法律がさだめられています。
この法律で、保安基準に適合しなくなるような自動車の改造や、装置の取付け・取り外しは違反とされています(道路運送車両法99条の2)。
したがって、保安基準に適合しない改造にあたれば、違法となります。違反すると、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(同108条)。
そして保安基準は、国土交通省がさだめています。
マフラーに関しては、国際基準にあわせることになり、四輪車については、車種に応じて『91db〜95db』の上限が設定されています(近接排気音測定)。バイクは『84db〜94db』です
そのため、基準値を超えるマフラーを取り付けることは違法になります」
編集部注:「db」(デシベル)は「音の強さ」を表す単位。90dbを超えると、会話の成立は「ほとんど不可能」とされている。
●「保安基準」に合わない車両は「車検」が通らない
それでは、車検はどうなるのだろうか。
「保安基準に適合しない車両については、車検を通すことはできません。
車検を通したあとにマフラーを改造して、違反が判明した場合には、『不正改造車』として整備命令が発令されます。この命令を無視すると、50万円以下の罰金の対象となります(道路運送車両法109条)。
このように、法律上、爆音マフラーの車両は違反です。そして、騒音基準は近年、世界的に厳しくなってきています。
しかし、市場には、さまざまな中古車があります。警察としては、騒音について、測定器を常時携帯して、すべての車両を取り締まるのは、スピード違反などの道路交通法違反の事案とくらべても、相当困難だといえます」