2019年07月09日 09時43分

火遊びの少年「退学処分は違法」私立中学に賠償命令 改めて考えたい「教育の本質」

火遊びの少年「退学処分は違法」私立中学に賠償命令 改めて考えたい「教育の本質」
画像はイメージです(EKAKI / PIXTA)

埼玉県内の私立中学校で退学処分となった少年が、運営する学校法人に損害賠償を求めた訴訟で、6月下旬、さいたま地裁川越支部が「退学処分は裁量権を逸脱し違法」として、支払いを命じる判決を言い渡したと「埼玉新聞」(6月20日)が報じました。

記事によれば、少年は、寮で火遊びをして退学処分になったといいます。約277万円の損害賠償を求め、約194万円の支払いが命じられました。学校側は控訴しています。

今回の詳細はわかりませんが、一般的に学校側に認められた「裁量権」とは何でしょうか。もし、不本意な退学処分があった場合には、生徒側はどのような対応ができるのでしょうか。宮島繁成弁護士に聞きました。

●「おとなの見守りと教育によって、成長して社会の一員になる」

ーー学校の「裁量」としての退学処分をどう考えますか

子どもの非行に対して、学校は、教育の専門機関として、教育目的を達成するために自らの判断で退学や停学などの懲戒処分を言い渡すことができます。これが学校の「裁量」です。

ただし、裁量にも幅があります。子どもにとって、いたずらや悪ふざけは当たり前。生まれたときから分別のある人はいません。失敗を繰り返しながら、おとなの見守りと教育によって、成長して社会の一員になるのです。これが教育の本質とも言えます。

とくに退学ともなると、子どもの今後の人生に大きな影響があります。このため、他の処分と比べてさらに慎重に判断する必要があります。裁判所も同じ考えです。

ーーどのような要件を満たすと、退学処分は認められるのでしょうか

退学処分の要件は学校教育法施行規則に定めがあり、実際には、人を死傷させるなど結果が重大である場合、行為自体の悪質性が著しい場合、何度も同じ過ちを繰り返している場合、他の生徒への影響が大きい場合などです。

今回の事件の詳細は報道からはよくわかりません。ひょっとすると裁判所は、退学というには事案が重くはなく、子どもの様子からすると教育的な働きかけが可能と考えたのではないでしょうか。

退学処分とする場合は、学校としてきちんと調査した上で、子どもや保護者に理由を告知し、弁明の機会を与える必要があります。

ーー学校側の命令に納得できない場合には、どのような手続きが可能でしょうか

退学処分を争う場合は、仮処分によって在学生としての地位の確認を求めたり、裁判で退学処分の無効・取消しを求めたりします。現実にもとの学校に戻ることが難しい場合は、学校の設置者に対して損害の賠償を求めることになります。

現実には、学校は退学処分にせず、生徒に自主的に退学届けを出すよう勧めるケースも多くあります。実質的には退学処分と異なりませんが、一見、生徒側の自主的な行動とみなされるため、表に出ないケースも多々あると思われます。

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宮島 繁成弁護士
日弁連子どもの権利委員会、いじめ問題対策プロジェクトチーム、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰など学校問題のほか、法教育、スポーツ問題などに取り組んでいる。中学校及び高校の教員免許を有している。
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