札幌の野球場で行われていた高校野球の公式戦が、「ハチの大群」が飛来したせいで中止になるという「珍事」が起きた。報道によると9月10日午後、試合開始直前に、黒っぽいハチの大群が外野からホームベース周辺に向かって飛んできた。ハチはさらにバックネット周辺で巣作りを始めた。数時間後に駆けつけた業者が薬剤で駆除したが、試合は翌日に延期されたという。
今回は幸い、選手・観客ともハチに刺される被害はなかったようだが、もし被害が発生した場合、誰の責任になるのだろうか。大会の主催者や球場の管理者にも、なんらかの責任が生じる可能性はあるだろうか。スポーツに関する法的問題にくわしい林朋寛弁護士に聞いた。
●主催者や球場管理者にはそれぞれ別の責任がある
「選手・観客がハチに刺される被害が発生した場合、大会の主催者は、債務不履行責任(安全配慮義務違反)、もしくは不法行為に基づく、損害賠償責任を問われる可能性があります」
どうやら、こうしたスポーツ大会の主催者は、試合だけでなく、選手や観客の安全についても責任を持つことになるようだ。それでは、球場管理者の責任はどうだろうか。
「球場の管理者については、球場の設置・保存について瑕疵(安全性を欠くこと)があるときの責任として、損害賠償責任の可能性もあります」
こちら側は「球場に欠陥があった場合の責任」ということだ。それぞれ、責任が認められるポイントはどんな点にあるのだろうか。
●ハチの群れが来ることを「予見できたか」「対策をすべきだったか」がポイント
「主催者に損害賠償責任が認められるかどうかのポイントは、『危険を予見できたかどうか』です。
一方、球場管理者の責任としては、球場に『通常有すべき安全性』が備わっていたかどうかが争点になりそうです」
それでは、具体的には、どんな「予見」や「安全性」が必要なのだろうか。
「ありとあらゆる危険や自然災害にすべて備えるのは不可能ですから、今回のハチの群れが球場に飛来することを予見可能であったか、飛来してくる対策を球場に備えなければならないほどの通常予想できるような自然現象であったかを検討する必要があります」
今回のようなハチへの対策は……?
「今回のハチの場合は、大群が『巣分かれ』で移動していたものとのことです。
もし、過去にもたびたびハチの群れが現れていたとか、近隣で発生していた等の事情があれば、予見可能だったと言える可能性もあるでしょう。
しかし、今回はそのような事例はなく、初めての事態だったようです。そうなると予見や対策は難しく、主催者や球場管理者の損害賠償責任まで問うのは困難だと思います」