「子どもが起こしたケンカ」についての相談は、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談のコーナー」に寄せられる定番のひとつだ。
特に、小学生や中学生の親からの相談が目立つ。「うちの子が授業中に同級生に殴られました」「よその子にケガをさせてしまった」など、子どものケンカは今も昔も変わらず、ある。
ただ一昔前と違い、菓子折りを持って親子ともども謝りにいけば一件落着・・・・になるとは限らない。ささいなケガでも弁護士の出番になることが少なくないようだ。そうなると「誰が責任をとるのか」という問題が出てくる。
小中学生同士のケンカだと、ケガをさせた子ども自身に「治療費を払え」と詰め寄ってもなかなか払ってもらえないだろう。最終的に治療費などを払う責任を負うのは、誰になるのだろうか? 子どもの権利問題に取り組む内山知子弁護士に聞いた。
●12歳程度になれば「民法上の責任能力はある」というのが判例の傾向
「まず、加害者である子ども自身に、民法上の『責任能力がある』と判断されたら、治療費などの損害賠償責任も、原則として子ども自身が負うことになります。その場合の責任は、子ども同士のケンカといっても大人と変わりません。
判例の一般的な傾向では、遅くとも小学校を終える12歳程度の年齢になれば、おおよそ民法上の責任能力があるとされているようです。ただ、これはあくまで目安です。年齢で区切るのではなく、それぞれの子どもについて個別に判断されるので、注意が必要です」
――では、子ども自身に責任能力が「ない」と判断されたら?
「加害者の子ども自身に責任能力がなければ、
(1)その「監督義務者」(親や未成年後見人など)
(2)その「代理監督者」(私立幼稚園・保育園、私立学校の先生など)
などが、監督義務を怠らなかったことを立証できない限り、損害賠償責任を負うことになります(民法714条)」
――学校も責任を負う場合がある?
「そうですね。ただ、国公立・私立で多少違いがあります。国公立の学校・園の場合には、国家賠償法上、実際に責任を負うのは国や地方公共団体です。先生個人が責任を負うことはありません。
一方、私立の学校・園の場合は、教師の責任を前提としています。そのうえで、学校法人などが、使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反にもとづく責任を負う場合があります」
――子どもと親の両方に責任があるケースは?
「そのようなケースもあります。たとえば、
(1)子どもに責任能力がある。
(2)親や学校の『監督上の不注意』とケガとの間に『相当因果関係』がある。
これら両方に当てはまるような場合です。
その際には、親や学校なども(子どもとは別に)損害賠償をしなければならなくなります」
たかが子どものケンカといっても、いざ法律問題として捉えると、こんなに複雑だということだ。なお、他人にケガをさせた場合の「刑事責任」は、これとは全く別の話なので注意が必要だ。