悪質な自転車運転をした者に対する取り締まりを強化した改正道交法が6月1日、施行された。新しいルールでは、信号無視や酒酔い運転など14項目の「危険行為」を規定し、3年以内に2回以上、危険行為で摘発された運転者に、安全講習の受講を義務づける。
このニュースを見た東京都内に住む主婦のG子(30代)は、不安にかられたそうだ。
「親の目が届かないところで、もし自分の子が危険な運転をした場合、大人と同様に摘発されることはあるのでしょうか?」
警察庁広報室の担当者に話をきくと「14歳未満の子どもが自転車の危険行為をした場合、安全講習を受ける義務はありません」との返答だった。
「警察官から、口頭で注意を受ける程度でしょう。通常、交通違反をすると『交通反則切符』というものが交付され、反則金を払わなければなりませんが、14歳未満はその対象に含まれません。ただ、14歳未満の子どもに対して何の安全対策もしていないわけではなく、小学校などでは、各都道府県の警察による自転車の安全教育を行っています」
どうやら「危険行為」にとどまっている限りは、14歳未満の子どもたちが「安全講習」に出たり、反則金を支払うことはないようだ。しかし、14歳未満の子どもがより重大な「自転車事故」を起こした場合は、どのような責任を問われるのだろうか? 好川久治弁護士に聞いた。
●14歳未満でも「損害賠償責任」を負う
「14歳未満の児童は、刑事責任能力がありませんので、自転車により死傷事故を起こしたとしても、成人のように刑罰を科されることはありません。ただし、成人であれば犯罪にあたる行為(触法行為)を犯していますので、警察から児童相談所長に通告され、児童相談所の『保護措置』を受けることになります」
では、民事責任が問われることはあるのだろうか。
「怪我を負わせた被害者との関係では、14歳未満でも、中学生にもなれば、自分の行為によって法的責任を問われることを理解する能力(民事の責任能力)があると考えられます。児童本人が被害者に対して損害賠償責任を負わなければなりません」
その場合、子どもの親には、なんらかの責任が発生するのだろうか。
「児童の両親も損害賠償責任を負うことがあります。たとえば、児童が過去に同様の事故を起こしたことがあるとか、日ごろから交通違反を繰り返したり、危険な運転をしたりしていることを知りながら、交通ルールを遵守させ、危険な運転をさせないための適切な教育を怠っていた場合です。
ただ、事故を起こした児童が小学生ですと、民事の責任能力はありません。そのため、児童自身は被害者に対して損賠賠償責任を負いません。この場合、責任を問われない児童に代わって親が、児童を法的に監督する義務を負う親権者として、被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。
この親の責任は、その親自身が、児童の監督義務を怠らなかったことや、義務を怠らなくても事故を回避できなかったことを証明すれば免れます。しかし、この証明はかなり困難とされていますので、事故が発生してしまうと、責任を免れることは容易ではありません」
好川弁護士は、このように述べていた。