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司法試験合格者3000人の政府目標半減「もっと減らすべき」多くの弁護士から意見
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司法試験合格者3000人の政府目標半減「もっと減らすべき」多くの弁護士から意見

司法制度改革で「3000人程度」とされてきた司法試験合格者の政府目標が事実上、半減することになった。政府は5月下旬、司法試験の合格者を「年1500人以上」とする案をまとめた。7月までに、政府方針として正式決定する見通しだ。

「3000人程度」という目標が決められたのは、2002年の閣議決定だった。しかし、合格者数は、2008年の2209人をピークに緩やかに減少し、2014年は2000人を下回った。目標は2013年に撤回され、今回の新たな目標では、少なくとも1500人程度の合格者を確保するべきとされた。

法曹人口の大幅増加を掲げてきた司法制度改革にとって、大きな転換点になるが、「年1500人」というラインを弁護士たちはどう見ているのか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。

●「1500人よりも減らすべき」が9割

以下の3つの選択肢から回答を求めたところ、31人の弁護士から回答が寄せられた。

1 1500人程度が適正→2票

2 1500人よりも増やすべき→2票

3 1500人よりも減らすべき→27票

回答は<1500人よりも減らすべき>が27票と最も多く、9割を占めた。<1500人程度が適正><1500人よりも増やすべき>はともに2票だった。

<1500人よりも減らすべき>という意見の多くは、「弁護士が増加しても、民事紛争をはじめとした法的な需要は増えない」という点を挙げていた。また、法曹の「質」を確保するために人数を減らすべきだという意見も多かった。目標人数としては「1000人程度」が適正ではないかという意見が複数あった。

一方で、<1500人よりも増やすべき><1500人程度が適正>という意見の中には、弁護士も自由競争にさらされるべきだという意見があった。

今回の回答のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士25人のコメント(全文)を以下に紹介する。(掲載順は、1500人は適正→1500人より増やすべき→1500人より減らすべきの順)

●1500人程度が適正という意見

【武山茂樹弁護士】

「私は、弁護士がある程度自由競争にさらされることは必要だと思っております。昔の弁護士は『紹介しか受けない』『一見さんお断り』のところも多かったと聞いています。弁護士が増えたことは、弁護士を身近なものにし、一般市民のアクセスを良くした意義はあると思います。一方で、確かに弁護士の増えすぎは、弁護士の質の低下を招くことは否定できません。従って、両者のバランスを取った1500人程度(これが適正というエビデンスはありませんが、現状に鑑み妥当なのではないでしょうか)が適正だと思います」

【甲本啓成弁護士】

「弁護士は自営業者。経営能力や自己表現能力、営業力、説得力を身につけていれば、たとえ弁護士の人数がふえても埋もれずにやっていけると希望をもっています。しかし、不安も常にある。減らすほうが自分にとっては好都合だと正直言えば感じます。迷いながらも1500人で妥当と考えた根拠は、少なくとも一旦社会に出て2〜3年経験した人や、法学部以外で学んだ人が、軌道修正をして『弁護士になりたい』と思ったときに、ある程度希望がもてる数字は維持してほしいと思うからです」

●1500人より増やすべきという意見

【齋藤浩弁護士】

「司法制度改革審議会意見書とその後の政府方針は3000人以上であった。一度もそれを実施せずに、変更することは許されない。それらを前提に進んでいた諸改革が大きな損失を受けた。さらに、法曹人口、弁護士人口を増やすことはグローバル経済、国際人権活動のために必要であり、ひとりわが国だけが消極方針をとることは、わが国に大きな禍根を残す」

●1500人より減らすべきという意見

【好川久治弁護士】

「規制改革の流れのなかで増員ありきの決定でした。弁護士が増えれば競争が促進される、質の向上と費用の低廉化が実現できる、国民が司法を身近に感じられる、司法の利用が促進される、埋もれていた事件がルールに則って解決される、裁判員制度が始まれば弁護士が必要だ、企業も弁護士を増員するなど、いずれももっともらしい理由ですが、増員の過程で内容を検証し、見直しをはかるべきでした。増員による成果とマイナス面を一から検証して適正な人数を決めていくべきです。今のままでは弁護士が存分に使命を果たせなくなるかもしれません」

【大貫憲介弁護士】

「司法試験に合格し、修習が終わっても、直ちに社会に役立てるだけのスキルを持った法曹になれるわけではない。若い法曹として活躍するには、法律事務所等で、3~4年修業を積む必要があると思う。現在、法曹界には、毎年1500人の修習終了者を受け入れるキャパシティがないことは明らか。おそらく、1000人前後が適当であると思う」

【中井陽一弁護士】

「年間合格者数が1500人でも、弁護士の人口は現状よりも増えていくとされています。弁護士の現状を見ていますと、司法試験に合格しても就職口が無い人がいたり、弁護士になったが売上が上がらず廃業する人なども、一昔前に比べると増えています。弁護士過疎地域はかなり解消されましたし、民事訴訟の件数が増えていない現状からしても、弁護士の人数をさらに増やしていく必要性は乏しいと思います」

【濱門俊也弁護士】

「弁護士である国会議員の方は多いですが、いわゆる族議員ではありません。しかし、司法制度改革は思いのほかスムースに進みすぎました。当職は、弁護士が司法制度改革の審議の際、弁護士がいい意味で族議員化してもよかったのかなと思っています。『衣食足りて礼節を知る』との言葉があります。合格者数を減らし、司法修習生の給与貸与制を何とかしてもらいたいものです」

【太田哲郎弁護士】

「司法改革というのは、個人の法律事務所を淘汰して、法律事務所の大規模化、組織化を図るのが、最大の眼目であり、弁護士数が約10年で倍増したことにより、その目的は十分に達することができ、個人の法律事務所の経営悪化、淘汰が進んでおり、これ以上の弁護士数の大幅増加を進める必要はないと思われます。500人合格時代に戻すのは困難でしょうが、1500人でも、弁護士数の大幅増加は止められず、合格者の大幅減少を進めるべきです」

【秋山直人弁護士】

「新司法試験に合格し、法律事務所への就職を希望したにもかかわらず就職ができず、即独立をせざるを得ない弁護士がかなりいます。弁護士にとって、先輩の弁護士と一緒に仕事をする中で、OJTで学ぶべきことはたくさんあります。また、相当無理スジな訴訟を起こしてくる、着手金目当てではないかと疑われる案件も目に付きます。毎年2000人も合格させていたことが、実際に種々の弊害を生んでいますので、まずは1500人まで減らし、そこで少し状況を見て、さらなる合格者の減員も検討すべきだと思います」

【梅村正和弁護士】

「平成26年度の法科大学院の実入学者総数は2,272人。募集定員合計が3,809人だったので定員割れが多く認められ、法科大学院によっては相当に学力レベルの低い学生が多数いることが予想されます。合格者が1,500人ですと、単純計算では合格率が66.02%となります。合格率が20%を切る極端に成績の悪い法科大学院も相当数あるので、今や司法試験は、合格者数が1,500人まで下がっても普通の人なら受かるレベルの試験になっています(弁護士の頭など普通の人以下で構わないということなら話は別かもしれませんが)」

【西谷裕子弁護士】

「現場の『直観的な感覚』としては、毎年1000人前後というのが、過不足のない適正数ではないかという気がします。直観的な感覚は、体感的なものなので、論理的に説明するのは困難なのですが、法曹関係者であれば何となく肌で感じているのではないでしょうか。限界が近づき始めている弁護士(会)が崩れ落ち始めると、結局、裁判所や検察官も訴訟追行の上で困るようになり、長期的に放置すれば、法曹界全体、司法全体が大きなツケを払うことになると思います」

【鐘ヶ江啓司弁護士】

「志願者数が激減して適切な競争が働かなくなっています(本年度のロースクール入学者は2200人程度です)。合格者数の削減と修習手当の実現により、法曹を魅力的な職業として、志願者数を回復することが急務です。また、残念ながら特に個人や中小事業者を相手とするいわゆるマチ弁については、情報の非対称性、個人が秘密の依頼をしていることから被害に遭っても声をあげることが出来ず(特に刑事事件など)悪評が広まりにくいという特殊性から、現状の増員政策が悪貨が良貨を駆逐するという事態が生じている危惧があります」

【近藤公人弁護士】

「弁護士の業務拡大が進んでいるが、まだ1500人規模ではない。行政(地方自治体)への弁護士職員の採用も業務拡大の一つであるが、弁護士は、そもそも在野が基本であるので、行政側の弁護士が増えることにも疑問を感じている。法曹の質について、検証は難しいが、法曹の質は低下しているという噂がある。司法試験に合格し、司法修習生の卒業試験で、学説にもない起案をした例があり、当時大きな問題になった。弁護士になっても、あり得ない刑事弁護人の行動があった。私は、一部の合格者の質が下がっていると思っている」

【糸島達三弁護士】

「1000人程度まで減らすべきである。現状、弁護士ばかりが増えているのに事件数は横ばいもしくは減少している状態で、弁護士過剰になってしまっている。食べてゆけない弁護士もかなりおり、弁護士資格を取っても登録せず一般就職する人も少なくないと聞く。法科大学院の学費や司法修習の貸与制で、500万円位の借金を抱えて弁護士事務所の就職先もないというのは異常である。こうした現状だから、法曹の志願者が減ってゆくのは当り前。一日も早く合格者を1000人程度とし、司法修習の給費制を復活させるのが急務と考える」

【大達一賢弁護士】

「人数が過剰になっていることは明らかとは思いますが、人数論ばかり先行していても意味がなく、『多様な人材を法曹に』という当初の司法制度改革の理念にしたがい、制度を抜本的に見直してほしい。個人的には経済的負担が過重で、社会人が自分の職を辞してまで入学することが事実上困難な法科大学院制度は一旦廃止して旧司法試験のように受験資格を原則として制限しない方向に変更すること、及び司法試験の合格ハードルを少し下げて司法研修所の入所窓口を広くした上で、研修所教育を充実させることが適切かと思います」

【山下基之弁護士】

「社会に必要な法律家といった場合、弁護士に限定せず、イギリスで『事務弁護士』業務とオーバーラップする日本の司法書士、税理士、行政書士、社会保険労務士を含めて、その数は検討されるべきである。すなわち、近年、弁護士隣接業種の充実は目を見張るものがある。毎年判・検事200名が必要だとして、いわゆる「法廷弁護士」は500名で十分と考える。その上で隣接業種と競争ではなく、協同して、士業業務全体の充実を展開すべきである。もちろん市民目線で」

【伊藤真悟弁護士】

「これ以上増やす必要はないと思います。弁護士が増加しても別に費用が安くなっていないというのが実情ですし、自戒もこめて質の低下のおそれを避けなければならないと思います。加えて、合格者数だけの問題だけでなく、法曹になるのにお金がかかりすぎる制度(法科大学院や貸与制)を即刻改めるべきです。司法制度改革ははっきり失敗だったといえます。小手先の合格者の微減程度でごまかすのはやめにしてもらいたいものです」

【加納雄二弁護士】

「弁護士の人数増やしすぎ。ロースクールも無用の存在です。ロースクール不人気の理由を当初沢山作りすぎたからだと弁解されてました。しかしもう入学者が2000人を切ろうとしてますが、法曹志願者の減少に歯止めがかかりません。もう少しすると、入学者数が司法試験合格者数を下回るでしょう。法曹志願者が4分の1(4万人→1万人)になったことも大問題です。ここはまず人数を絞って、需要拡大にも努力して、出直すべきと思います。志願者も、需要も増大したところで再度見直したらどうでしょうか?」

【荒川和美弁護士】

「司法改革は、法的需要が増加し続けるとの予想に基づいていた。しかし、これは間違っていた、そして、弊害が、この10年ではっきりした(世紀の司法大改悪 弁護士過剰の弊害と法科大学院の惨状 鈴木秀幸著)。最終的には、安かろう悪かろうという、国民が不利益を被るリスクになりつつある。過剰供給したのなら、調整が必要なのは、経済原理として当然である。適正人口になるまで、大幅減員を当分のあいだ行い、一方で国民にリスクを負わせないためにOJTによる質の確保が必要である」

【岡田晃朝弁護士】

「『司法の機能を充実強化し、国民が身近に利用することができ、社会の法的ニーズに的確にこたえる』という司法改革の目的を達成するのに、単に人数を増やすというのは、短絡的に過ぎる改革であったでしょう。結局、数を増やした結果、多くの問題が生じ、かえって社会の法的ニーズに応えれなくなっている以上、法曹の数は減少させ、社会の法的ニーズに的確に応えるための方策を一から検討すべきでしょう」

【藤本尚道弁護士】

「法曹人口を爆発的に増加させる政策は、司法制度改革の大きな『目玉』でした。それは日本がアメリカのような『訴訟社会』になることを前提に、そのような社会に対応できるよう、法曹人口を大幅に増やそうとしたものです。しかし、日本では訴訟はむしろ敬遠され、訴訟件数は減少の方向にあります。そもそもの前提が間違っていたわけですから、『実情』にあわせて方針を転換するのは当然の選択だと思います」

【桑原義浩弁護士】

「この問題に対する弁護士の意見となれば、今は大半が弁護士数増加にストップをかけたい、というところではないでしょうか。司法改革と言っても、現実に増えていったのは弁護士で、それに見合うような事件数、業務分野の拡大は進んでいない、という印象です。ほとんどの弁護士が事務所経営に追われています。そうすると、不祥事も増えるでしょうし、依頼者にとっても望ましくありません。これから法曹を目指す方々には厳しいことにはなりますが」

【高谷滋樹弁護士】

「そもそも、現在の法曹養成制度は、すでに破綻しているので、政治主導で、合格者数という一部の問題だけではなく、全体として、ゼロベースで、改革することが急務です。数字だけが、一人歩きして、正しく、現状が、マスコミを通じて伝わっていないことを危惧しております。まずは、法曹養成制度から、文科省を切り離すことが必要だと思っております」

【居林次雄弁護士】

「弁護士の実数が多すぎることは、就職できないのであれば、司法試験を受験しても仕方がないとか、果ては、司法試験制度の根幹から、弁護士に対する社会的評価まで影響しかねない状況です。これは、合格者を実需に合わせることなく、いたずらに多くしすぎた結果であると思われます。この際思い切って合格者を減らすことにより、就職を容易にして、司法制度のまず社会的評価を挙げることにより、誤解を解くべきです。まず思い切って減少させて、合格者の完全雇用の程度を見て、最終的な合格者数とするより仕方ないと思われます」

【本橋一樹弁護士】

「司法試験合格者が増大する以前の弁護士は、知識・経験から生き延びることができるでしょうが、合格者増大後に就職浪人が増えたことは客観的に明らかなことです。修行・トレーニングをしないままに実務家にならなければならないということは、本人にも厳しい結果が待っています。やはり、司法修習後にきちんと修行ができる環境がなければ、生き残れない弁護士があふれると思います」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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