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児ポ法の「最も重い罪」で初逮捕――児童ポルノ撮影目的の「人身売買」って何だ?
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児ポ法の「最も重い罪」で初逮捕――児童ポルノ撮影目的の「人身売買」って何だ?

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児童ポルノ映像を撮影する目的で、中学3年の女子生徒(14)を「売買」したとして、茨城県の風俗店経営の男性(25)と群馬県の会社員男性(38)が、児童ポルノ禁止法違反(児童買春等目的人身売買)の容疑で逮捕された。児童ポルノ撮影目的の「人身売買」が摘発されたのは、国内で初めてという。

各社報道によると、児童ポルノを撮影するため中学生を探していた会社員男性に対し、風俗店経営者が今年2月21日、茨城県内のホテルで、中学3年の女子生徒を15万円で引き渡した疑い。女子生徒は家出中で、風俗店経営者の自宅で寝泊まりし、デリバリーヘルスで働かされていたという。女子生徒は翌朝まで撮影に応じ、その後、風俗店経営者の家に戻っていたそうだ。15万円のうち2万円は、女子生徒に渡っていたという。

今回は児童ポルノの撮影のための「人身売買」が摘発されたが、どういう犯罪なのだろうか。少女が自らの意思で行動しているように見える場合でも、「人身売買」にあたるのだろうか? 児童ポルノ問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。

●刑法の「人身売買罪」よりも先に制定

「『児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買』する行為は、児童ポルノ禁止法8条1項で、1年以上10年以下の懲役と定められています。

これは、この法律の中で最も重い罪です。

人身売買の禁止は、東南アジア等において、児童買春や児童ポルノの製造を目的として、児童が売買等されている実態に対処しようとする趣旨で、1999年制定の児童ポルノ禁止法に設けられました。

なお、刑法に『人身売買罪』が新設されたのは2005年のことですから、刑法に先行する形で制定されていたことになります」

そもそも、児童の売買とは、どんな行為なのだろうか?

「児童ポルノ禁止法の人身売買が適用されるケースは非常に珍しく、まだ判例が確立しているわけではありませんので、今回は刑法の人身売買罪の解釈(※1)を参考にしながら、お話しします。

ここでの『児童の売買』は『児童を売り渡す』ことと『児童を買い受ける』ことの両方を含みます。つまり、売主も買主も本罪にあたります。

まず、『児童を買い受ける』の定義は、対価を支払って、売主からその事実的支配下に置かれた児童の引渡を受け、自己の事実的支配下に置くことです。

他方、『児童を売り渡した』とは、対価を得て、売主の事実的支配下に置かれた児童を買主に引き渡すこと、と解されます。

つまり民法でいう売買とは異なり、単に契約が成立しただけでは足りず、『事実的支配の移転』を要すると解されます」

児童が、売り渡す側の支配下から、買い受ける側の支配下に移ることが必要というわけだ。

●「事実的支配下」とはどんな状況?

仮に、児童が常に監視・拘束されていない場合でも、この犯罪にあたる可能性はあるのだろうか?

「人身売買罪は、『被害者の自由を完全に拘束することまでは必要ない』と解されていて、児童にある程度の自由があっても、成立する余地があります。

法務省の解説(※2)によると、『事実的支配下に置く』とは、『物理的、心理的な影響を及ぼし、その意思を左右できる状態の下に対象者を置き、自己の影響下から離脱することを困難にさせること』だとされています。

判断の際には『場所的移動の有無やその程度、自由拘束の程度やその時間の長短、対象(被害)者の年齢、犯行場所の情況、犯行の手段方法等あらゆる要素を総合考慮』するとされています」

一時的に児童が自由に行動しているようにみえても、ケースによっては「支配下に置かれていた」と解釈できる余地があるわけだ。

●少女が「どんな状況に置かれていた」のか

「今回は『女子生徒が翌朝まで撮影に応じ、その後、風俗店経営者の家に戻っていた』ということですが、そのような状況で『事実的支配下に置かれていた』と言えるかどうかは、事実認定の問題になります。

なお、東京高裁の2010年7月13日判決のように、少女が『勝手にビールを飲んだり、もらった国際電話のプリペイドカードで自由に国際電話をかけたりするなど、かなり気ままに振る舞っていた』などと事実認定して、人身売買だとは認めなかったケースもあります。

本件についても、被疑者の下で児童がどのような状況に置かれていたのかが、争点になるものと思われます」

奥村弁護士はこのように指摘していた。

(※1 条解刑法第3版 P664)

(※2 島戸純「『刑法等の一部を改正する法律』について」捜査研究 第649号)

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

奥村 徹
奥村 徹(おくむら とおる)弁護士 奥村&田中法律事務所
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。

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