三重県の中学3年生の女子生徒(当時15歳)が死亡した強制わいせつ致死事件で、津地方裁判所は3月下旬、当時高校3年生だった被告人の少年(19)に有罪判決を言い渡した。その量刑は「懲役5年以上9年以下」という幅のあるものだった。
報道によると、被告人の少年は2013年8月25日の深夜、花火大会から帰宅途中の少女を襲い、鼻や口を手で塞ぐなどして窒息死させ、現金約6000円を盗んだとされた。津地裁の裁判員裁判で、強制わいせつ致死と窃盗の罪で有罪とされた。
ネットでは今回の判決について「なぜ、刑期に幅があるのか」という疑問の声があがっている。この「何年以上何年以下」という懲役は「不定期刑」と呼ばれ、少年事件特有の刑罰らしい。どんな特徴があるのか、少年事件にくわしい星野学弁護士に聞いた。
●不定期刑は「教育」
「『懲役5年』など期間の幅がない刑罰は『定期刑』と呼ばれています。一方、今回のように期間の幅のあるものは『不定期刑』呼びます。この不定期刑は、少年事件に特有の刑罰です」
どうして、少年事件にだけ、不定期刑があるのだろうか。
「定期刑と不定期刑の違いは、単に期間の違いだけではなく、そもそもその刑罰をどのように捉えるのかが大きく異なります。
おおまかにいえば、定期刑は犯した犯罪への『罰』と捉え、不定期刑は犯罪を犯した人への『教育』と捉えます」
罰と教育とは、大きな違いがあるが、いったいどういうことだろうか?
「未成熟な存在である少年は個人差が大きく、刑事施設で教育を受けることによって、比較的早く矯正される場合と時間がかかる場合がある、と考えられています。
そのため、もし少年がきちんと矯正されたのであれば、少年の社会復帰を優先して、懲役刑を早めに終わらせてもよいという考えが、少年法の根底にはあるのです」
いくらまじめに更生したからといって、懲役刑を早めに終わらせる必要はないのではないか?
「仮に、矯正された少年をずっと懲役刑にしたままにすると、少年が一般社会で職に就くことがその分困難になり、社会復帰の機会がどんどん失われてゆきます。
そうすると、せっかく矯正され、本来ならまっとうに社会復帰できていたはずの少年が、再び犯罪に手を染めてしまう可能性を、逆に高めてしまいかねません」
●「犯罪を減らす」には?
それはきちんと反省し、償いをすることが前提の話だろう。
「もちろん、『少年である』という理由で、被害者やその家族への償いをしないという態度は許されません。
しかし、さきほどのような指摘もあり、『少年事件に対する処罰が軽すぎる』といって単純に厳罰化しても、それで犯罪が少なくなるとは言い切れないのです。
裁判で刑罰を決める際には、『犯罪を減らし、犯罪被害者をより少なくするために、どんな方法をとることが適切なのか』ということを、冷静に考える必要があります。
その選択肢の一つとして、『不定期刑』があるのだと思います」
星野弁護士はこのように述べていた。