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わが子に「万引き」させた親が逮捕! 小中学生の子どもの「罪」はどうなる?
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わが子に「万引き」させた親が逮捕! 小中学生の子どもの「罪」はどうなる?

小中学生の子ども3人に万引きをさせていたとして、子どもの両親が窃盗容疑で逮捕された。読売新聞によると、両親は昨年10月、大阪府吹田市内の釣具店で、中学生の長男(14)、小学生の次男(12)と長女(9)に釣り具セット3点を渡し、店外に持ち出させた疑いがもたれているという。

両親は「子どもが勝手にやった」と容疑を否認したが、大阪府警は、防犯カメラの映像や親子がやり取りしたメールなどから逮捕したという。両親は、万引きが見つかるたびに、店員の前で子どもをしかりつけて謝罪し、逮捕・通報を免れていたと報じられている。

報道通りならば、親の責任は免れないと考えられるが、「子どもの責任」はどうなるのだろうか。このようなケースでは、親だけでなく、子どもも「窃盗罪」になるのだろうか。刑事事件にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

●子どもの意思は抑圧されていたか?

「未成年であっても、子どもが『他人の物を盗る』ということを理解していれば、窃盗罪にあたります。

ただし、刑法では、14歳に満たない者の行為は罰しないとされています。したがって、12歳の次男と9歳の長女が、窃盗罪として罰せられることはありません。

これに対して、長男は14歳ということですから、年齢的には、窃盗罪に問われる可能性があります」

大川弁護士はこのように述べる。仮に、親が子どもに万引きを命じていたなら、どうだろう?

「親から命令されて、本人はしたくないのに万引きをしていたような場合でも、『子どもの意思が抑圧されている』というような事情がない限り、窃盗罪に問われる可能性があるのは同じです」

意思が抑圧というのは、どういう意味だろう?

「判例は、次のような事情があったケースで、『意思が抑圧されていた』と判断しています。

父親が、12歳の養女に窃盗を繰り返させたという事件です。その事件で、父親は、養女が自分の言動に逆らう素振りをすると、タバコの火を顔面に押し付けたり、ドライバーで顔をこするなどの暴行を加えて、養女を自分の意のままに従わせていました」

●子どもたちの処遇は?

今回の吹田市の事件では、長男は結局、少年鑑別所に送られることになったと報じられている。一方、次男と長女は保護され、児童相談所に通告されたという。

「おそらく14歳の長男については、『少年事件』として、家庭裁判所で処理されたのだと考えられます。

一方、次男と長女のように14歳未満の場合は、『触法(しょくほう)少年』と呼ばれ、児童相談所などによる児童福祉法上の措置が優先されます。

なお、14歳未満の場合でも、知事や児童相談所長の判断により家庭裁判所に送られて、『少年事件』として処理されることがあります」

大川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大川 一夫
大川 一夫(おおかわ かずお)弁護士 大川法律事務所
大阪弁護士会所属、元同会副会長。現在、同会労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員。龍谷大非常勤講師、日本労働法学会会員、連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。

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