2015年03月17日 12時16分

野良猫に餌をやったら5万円の罰則⁉︎ 京都市の「野良猫餌やり規制」は何が問題か?

野良猫に餌をやったら5万円の罰則⁉︎ 京都市の「野良猫餌やり規制」は何が問題か?
写真はイメージです

野良猫に不適切な餌やりをしたら、5万円以下の制裁金! 京都市議会で審議されている「動物による迷惑等の防止に関する条例」が波紋をよんでいる。

京都市が2月から3月にかけての議会に提案した条例案では、「所有者等のない動物」に餌やりをする場合、「適切な方法」が求められ、「周辺の住民の生活環境に悪影響」を及ぼすような餌やりを禁じている。この規制に違反すると「5万円以下の過料」を科すというのだ。

●猫以外の鳩やアライグマも規制の対象

では、条例案があげている「所有者等のいない動物」とは何だろうか? 

京都市に話を聞いてみると、「実際に住民から相談が寄せられる、猫、鳩、カラス、アライグマなどを想定しています。ただ、圧倒的に多い動物としては、猫です」(保健福祉局保健衛生推進室保健医療課)という。

そこで、この条例は、所有者等のいない猫、つまり、「野良猫」への規制だと騒がれているのだ。わかりやすくいえば「野良猫餌やり禁止条例」というわけだ。

厳しすぎる対応にも思うが、この条例案を提出するまでに、京都市も手をこまねいていたわけではない。市では「まちねこ活動支援事業」と名付け、町内会の同意をとった有志の住民が、野良猫の避妊去勢手術や世話をする活動を支援してきた。

しかし、糞尿などによる被害の訴えが一向に減らなかったため、今回の条例提案に踏み切ったのだという。議会の会期末は3月20日。それまでに成立すれば、4月1日に施行される見通しだ。

●法律では「愛護動物」として守られる立場

はたして、この「野良猫餌やり禁止条例」は、法的に問題ないのだろうか。条例案では、野良猫の餌やりを規制しているだけでなく、猫は屋内で過ごさせるようにと提唱されている。猫の自由が大幅に制限されているように感じるが・・・。

「実は、その点は京都市の条例案がはじめてではなく、『家庭動物の飼養保管基準』という環境省令で、すでに定められています」

こう指摘するのは、動物の法律問題にくわしい細川敦史弁護士だ。

「放し飼いの猫は、交通事故や猫同士のケンカによる負傷、病気などのリスクがあります。そこで、むしろ猫を守るために、飼い主に一定の義務を課しています。努力義務という緩やかな形での法規制であり、厳しすぎることはないと考えます」

では、野良猫への餌やりを禁じるのは、どんな問題があるのだろうか?

「主に猫の餌やりとの関係で、法律上の問題と、野良猫対策の現場への悪影響といった問題を含んでいます。

まず、今回の条例案では『周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌』が禁止の対象とされており、具体的な基準は、必要に応じて市長が決められるとあります。

一方で、法律では、所有者のいない猫に餌をやること自体は、禁止されていません。むしろ、動物愛護管理法では、猫は所有者の有無にかかわらず、『愛護動物』として、虐待や遺棄から守られる地位にあります。

こうした法律の条文や趣旨からすると、猫の餌やりを規制することは、原則として慎重であるべきと考えられます」

●かえって「住民間の対立」を招くおそれも

条例案を出すまでには、市民からの苦情対応に追われた経緯もあるようだ。

「もちろん、駐車場など私有地での勝手な餌やりや、公園などで餌を片づけずに放置することは、問題です。また、不妊去勢手術を施さず、猫の頭数管理をしない単なる餌づけ行為は、動物愛護の観点からも、いかがなものかと思います。

ただ、だからといって、曖昧な基準をもって、条例で餌やりを規制しなければならないのかどうかということは、別に検討する必要があると思います」

法律上の問題だけでなく、住民間にわだかまりが生じるようなことにならないか。

「猫への餌やりをめぐっては、過去に、住民間の暴力・脅迫事件などのトラブルや自殺未遂に発展したケースもあるほど、難しい問題です。

野良猫問題について、2005年に東京都が作成したガイドブックにも、餌やりを禁止しても感情的な対立を生むだけで問題は解決しない、との指摘があります。

条例を制定した自治体の意図が住民に理解されず、また、拡大解釈されることで、誤解による住民間の対立を招くおそれが大きいのです。2008年に同種の条例が導入された東京都荒川区でも、実際に住民間の感情的な対立があり、所有者のいない猫の対策事業が非常に難しくなっています」

●平安時代の宇多天皇は猫好きだったらしいが・・・

細川弁護士は、この条例案をどう評価するのだろうか。

「今回の京都市の条例案が成立した場合、自治体として取り組んでいる『まちねこ活動支援事業』に支障が生じる可能性や、住民同士のトラブルを招くおそれがあるでしょう。

今回の条例については、市としても十分な時間をかけて検討を重ねてきたと想像しますが、多くの反対意見の中にある、説得的・合理的な指摘を素直に受け止めて、ときには踏みとどまる勇気も大事ではないかと思います。

余談ですが、京都・平安時代の宇多天皇は、非常に猫好きであったとされています。その京都において、1000年以上の後世に、猫への餌やりを巡って賛否の議論をしているとは、夢にも思われないことでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

細川 敦史弁護士
2001年弁護士登録。交通事故、相続、労働、不動産関連など民事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペットの法と政策研究会代表、ペット法学会会員。

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