東京都渋谷区が2月中旬、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める条例案を発表したことが、大きな反響を呼んでいる。
渋谷区の条例案は、同区在住の20歳以上の同性カップルが申請すれば、区が「パートナーシップ証明書」を発行するというものだ。お互いを後見人とする公正証書の提出などが条件になっているが、LGBT(レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)など性的少数者から条例案を歓迎する声があがっている。
●憲法は「異性婚」のみを想定している?
ただ、今のところ「同性婚」そのものは制度的に認められていない。この問題は国会でも取り上げられたが、安倍首相は2月18日の参院本会議で、同性婚について「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べた。しかし一方で、「憲法24条は同性婚を排除していない」という意見が、LGBT支援者や法律家などからあがっている。
憲法24条1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」という文言がある。これをどのように解釈するかで、結論が変わってくるようだ。
はたして憲法は「同性婚」を認めていないのか。それとも、認めているのか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
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杉本 朗 弁護士
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太田 哲郎 弁護士
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8名我が国の憲法は、24条1項において「婚姻は、両性の合意のみに基いて」とし、2項も「両性の本質的平等」としています。文字通り読めば、憲法が保障している結婚というのは両性の間で行われるもの、すなわち男女間の婚姻ということになるのでしょう。もっとも、制定根拠は家制度からの脱却という点にあり、同性婚を禁じるために記載されたものではないと考えられます。

憲法は、それぞれの人が自分の生き方は自分で決めること(=自己決定権)を保障しています。その一環として、結婚するかしないか、同性婚か異性婚か決めることも保障されていると考えます。 憲法24条の表現は、憲法が作られた当時は、異性婚が普通だったという時代的制約によるもので、それから直ちに同性婚を憲法が保障していないということは短絡的だと思います。
憲法24条1項は、同性婚を排除し両性(男女)のみに婚姻を認めるかどうかは重視せず、両親や一族の同意といった家制度に縛られず、夫婦の合意だけで自由に結婚できるようにすることを意識して作られた規定といえます。そのため、24条1項自体は同性婚について中立的、端的に言えば同性婚をあまり意識していなかったといえます。 他方で憲法13条は幸福を追求する権利を認めており、同性婚も両性の結婚と同様に幸福の追求には必要といえますから、憲法は同性婚も認めているといえます。
「婚姻は、両性の合意のみに基いて」(憲法24条1項)「両性の本質的平等」(同条2項)という文言をそのまま読めば、男女の両性ということになるかと思います。 しかし、憲法制定時の歴史的経緯から考えると、「両性」とは、婚姻しようとする二人、と読むことができます。すなわち、許嫁制度など、婚姻しようとする二人以外の意思を介在させないという趣旨です。したがって、憲法24条は同性婚を禁じるためのものではないし、婚姻しようとする二人を妨げないものだと考えられます。
憲法24条の文言からすれば、ここには同性婚というものを含めるのは難しいと思います。両性の平等が保障された日本国憲法のなかで、婚姻という場面でも女性が差別されないことを保障するのが同条の趣旨だと考えます。ただ、憲法が同性婚を認めていないのか、というとそうではなく、憲法13条にいう自己決定権のなかで、自分のライフスタイルを決めていく権利は保障されているので、ここから同性婚を選択する自由は保障されているものと考えます。

憲法の規定の「両性の」という表現は、憲法制定当時の同性愛についての社会的な認識の状況に制約されていたものであり、特に、同性婚を否定する趣旨での規定ではないと解され、その後、現在のように、同性婚が、異性婚と同様に法律上認められるべきであるという社会風潮も有力となった段階では、法律により、同性婚を認めることとしても、それを、憲法が許さない趣旨であるとは、解されないからである。
憲法24条に「両性」という言葉が使われているのは制定時に同性婚を想定していなかったからに過ぎず、同性婚を排除する意図はないでしょう。 他方で憲法14条は法の下の平等を定めており、性的指向のように本人が自由に選択できない事由による差別は、人種や性別による差別と同様、原則としてこの規定に違反すると考えられます。 これに照らせば、異性愛者のカップルのみに婚姻による法的保護を与えて同性愛者のカップルにそれを与えないことこそ憲法違反であり、同性婚を認めるのはむしろ憲法上の要請だとも言えると思います。
同性婚は、幸福追求権(13条)に含まれるべき内実をもっているので、憲法の保障対象と考えるべきです。憲法は、少数者の人権の保障を意図し、13条は、後の人権思想を包含するための規定だからです。 なお、現行法下においても、同性婚への法的保護は可能です。①内縁関係と同様、準婚関係と捉える事が出来るでしょう。その不当破棄は、慰謝料の対象と考えます。②同性婚契約の締結が可能です。③外国にて有効に成立した同性婚は、既に、日本における在留資格(ビザ)の対象になっています。
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1名日本国ないし日本人の民族の文化風俗として、婚姻に同性婚は含まれていないこと。憲法24条1項の「両性」という国語的意味として同性は含まれないこと。同項はまた「夫婦」とあり、明らかに男女の婚姻を考えていること。などから憲法は同性婚を想定しているとは考えられません。また身分法の根幹の問題ですので、明文規定がない以上憲法は認めていない、と私は考えます。要するに条文化するには、議院の議決だけでなく国民投票が必要なトピックであると考えます。
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11名憲法の立場は、以下の三つがあり得ます。①同性婚を憲法上の権利として認めている。②禁止している。③憲法上の権利として認めていないが禁止まではしていない。法律によって認めることは差支えない。 私は③が憲法の立場と考えます。24条は、「家」制度を否定することに主眼があり、同性婚を排除しているとまでは言えないからです。ただし、同性婚を憲法上の権利とまで認めているというのは難しいと思われます。なお、国民の意識等、時代の変化によって、今後平等原則違反と判断される可能性はあるのではないかと考えます。
現行憲法制定当時(昭和21年)は、婚姻が本人の意思を無視して戸主が決める「家制度」が日本全体に行渡っていたことから、それ打破して、本人の意思だけで婚姻が出来るようにさせるの主要な目的であって、同性婚など予測し得ない事象であったと思います。 しかし、半世紀以上経過して社会情勢の変化が起き、憲法改正の困難さも考えると、同性婚は、憲法の基本原則に関係しない対象事項ゆえに、それを是認する法律が出来ても、憲法違反とまでは言え無いのでないかと思います。
憲法の制定経緯からすれば、同性婚を法制度化することは、憲法の要請ではないと考えます。 他方、同性婚が整備されたからと言って違憲とはならないと考えます。憲法自身が,かかる場合における人権を制限することはないと考えられるからです。 個人的には、早急に、同性婚を法制度化し、男女の婚姻と同等の法的保護を付与すべきであると考えます。
憲法の想定外である。当時、同性での婚姻など考えられない状況であった。男女間での婚姻しか念頭になかったもので、過去における個々の当事者男女以外の者からの干渉を排除することが重要であったから憲法24条は出来たものと考えられる。同性婚などは全く念頭になかったもので、同性婚を排除しているとも認めているとも言えないと考えられる。
法律上の「婚姻」の定義をジェンダーレスにする方法を日本国憲法24条が想定しているとはいえないでしょう。 さりとて、同性愛者が歴史的に我が国にも存在し、現代においても「同性婚」を望む方々がおられることも見逃せません。 日本国憲法24条を改正しないのであれば、男女の婚姻とは別枠の制度として、異性結婚の夫婦に認められる権利の全部もしくは一部を同性カップルにも認め、保証するという法律を作る方法を探るべきでしょう。
憲法制定当時は、このような問題を正面から取り上げる社会情勢ではありませんでした。 したがって、憲法には規定がないと解釈するのが自然であろうと思われます。 世代にもよりましょうが、高齢者の世代では否定的な見解が多いと思います。 道徳的に、許せないということです。 何の必要があるのかも理解できないというところです。 したがって、憲法違反の問題は起こらないでしょうが、感情的には腑に落ちないと思います。
憲法制定当時に同性婚を想定していなかったのはその通りだと思います。 もっとも、立法政策で認めることを排除するものではないし、社会情勢の変化でこれを憲法上の権利として認められる可能性は大いにあると思います。 憲法の規定は、他者の権利と衝突しない限りは権利を制限するものではありません。したがって、同性婚が憲法上の権利として予定されていないとしても、これを禁止しているという解釈は誤りだと思います。
条文は夫婦、両性という言葉を使っていますので、 同性婚を権利として認めているとはいえないでしょう。 他の先生方の回答にあるように、 憲法制定当初はそもそも想定されていなかったと思います。 ただ、二人の人間同士の結び付きに いかなる法的な保護を与え、義務を命じるかは立法裁量の問題なので、 異性間の婚姻と同じ法的保護と義務を認めても、違憲ではないと思います。
憲法は、そもそも国民の人権を国家権力が不当に制約しないようにするためのものです。そのことからすれば、憲法24条は、婚姻は他人から干渉をされず、両当事者の合意によって成立するという意味合いであって、同性婚を禁止はしていないと考えます。 ただ、同条自体は、同性婚を想定しておらず、積極的に同性婚を権利として認めているかどうかは微妙な問題であると考えます。
憲法は個人主義と男女平等の観点から婚姻を規定しており同性婚については条文上全く予定していません。 プライバシー権のように解釈で認められている権利はありますが、婚姻は単なる権利とは異なり一つの制度ですので、憲法が同性婚制度の創設まで国家に要求していると解釈するのは解釈の限界を超える可能性はあります。 ただし、事実上の同性婚までは否定しておらず、また、積極的に同性婚制度の禁止を求めているわけでもありません。 したがって、憲法の立場としては、どちらでもないということになるでしょう。
憲法ができた当時は、結婚する2人の意思以外に家長の意思とかによって結婚が強制されるような悪しき慣習があり、それだと憲法の一番大切な個人の尊重という価値に反するので憲法24条が置かれました。 また、当時は、同性婚を認めるというような議論はなく、両性(男女)という言葉もとうぜんのこととして使われただけと思います。憲法も認めているとまではいえないかもしれませんが、同性婚も、それを望む個人の尊重という憲法の価値に合うという考えが少しずつ浸透してきて、法律や条例レベルで認めていくことになると思います。
ニュース編集部後記
アンケートで回答した27人の弁護士のうち、17人が<どちらでもない>を選択した。一方で、9人が<憲法は「同性婚」を認めている>、1人が<憲法は「同性婚」を認めていない>を選んだ。
<どちらでもない>の理由としては、「憲法上の権利として認めていないが禁止まではしていない。法律によって認めることは差支えない」という意見があった。
<認めている>の意見の中には、「(憲法24条の)制定根拠は家制度からの脱却」「(自己決定権を定めた)憲法13条のなかで保障されている」という意見があった。<認めていない>と回答した人「明文規定がない以上憲法は認めていない」という意見を示した。
今回の渋谷区の条例案をきっかけに「同性婚」をめぐる議論が広がっている。性的少数者の人権にかかわる問題であり、今後の展開しだいで、「同性婚」を認める立法の議論へとつながっていくかもしれない。