12月14日に投開票される衆院選。昨年の参院選と同じく「ネット選挙運動」が認められているため、候補者や政党、有権者がブログやSNSで選挙運動を繰り広げている。
特に、ツイッターやフェイスブックなどのSNSを使えば、有権者も簡単に選挙運動ができる。ただ、有権者も公職選挙法のルールをきちんと守る必要があり、違反すれば罰則もある。
有権者が選挙に関する話題をSNSに投稿する際、どのような点に気をつければよいのだろうか。ネット選挙の法律にくわしい深澤諭史弁護士に聞いた。
●特定候補者の名前をあげて『税金泥棒!』は避けるべき
「大まかにいえば、次の2点に気をつけるべきでしょう。
(1)候補者の名誉を毀損(きそん)しないこと
(2)公選法の細かい規定に違反しないこと」
深澤弁護士はこうポイントを指摘する。具体的にはどういう問題があるのだろうか。
「まず(1)については、ネット選挙に限ったことではありませんが、特に選挙運動期間中、各候補者は警戒しています。
もちろん、自分の支持候補を応援しようとする気持ちはわかります。しかし、その思いが暴走して、ライバル候補の名前をあげるなどしたうえで、『犯罪者!』『税金泥棒!』『嘘つき!』と不穏当な表現で書き込むことは慎むべきです。
なお、公職の候補者に対する名誉毀損については、『真実であることの証明があったときは罰しない』という特例がありますが、その証明は難しく、そう簡単に責任は免除されません」
●「bot」のツイートは「なりすまし」になる可能性
また、公選法には細かい規定が多くあるが、深澤弁護士は気になっていることがあるという。
「特に気になっているのは、『連絡先の明記のない』選挙運動です。主に、匿名掲示板で散見されますが、ネット選挙においては、メールアドレスなど連絡先の明記が本来は必要です(公選法142条の3第3項)。
ですから、匿名掲示板に連絡先の記載もせずに、『●●候補に投票しよう!』と投稿してはいけません。逆に、匿名であっても、連絡手段が明記されていれば、問題はありません」
さらに、SNSといえば、有名人の「なりすまし」がよくあるが、候補者の「なりすまし」も起こりうる。
「勝手に候補者名のアカウントを作成してツイートする『なりすまし行為』は禁じられています(公選法235条の5)。また、候補者の発言を自動ツイートする『bot』を作成する行為も『なりすまし行為』として禁じられる可能性が高いでしょう」
●選挙当日も「リツイート」には注意
投開票当日に気をつける点はあるのだろうか。
「投開票日の選挙運動は禁止されていますが、ネット上でもやってはいけません。
また、単に投票を呼びかけるツイートだけでなく、リツイートにも注意が必要です。リツイートであっても、新たに拡散する行為ですので、選挙運動になると考えられるからです。
一方、選挙当日には、ツイッターで「投票してきた!」という投稿をよく見かけます。こちらは、特定の候補への投票を呼びかけるものではないので問題ありません」
さらに、深澤弁護士は次のように注意を喚起していた。
「インターネットそのものの影響力がそうであったように、今後、ネット選挙が投票行動に与える影響は大きくなりこそすれ、小さくなることはないでしょう。
影響力が大きくなるにつれ、取り締まりが厳しくなったり、あるいは候補者からの法的措置が多くなることも予想されます。
一般市民が知らずに公選法違反をしてしまうことで、法律問題に巻き込まれてしまわないか、利用者全員が注意することが必要であると思います」