教員の処遇改善を巡り、国会で給特法改正の論戦が繰り広げられている中、日本労働弁護団主催の院内集会が4月22日、衆議院第二議員会館(東京都千代田区)で開かれた。
現役教師や弁護士など6人が改正案に対する問題点を指摘。同弁護団の常任幹事を務める嶋﨑量弁護士は、残業代を支払わない枠組みを維持した改正案について「これで労働時間が改善されるのなら、日本に労働基準法はいらない」と真っ向から否定した。
⚫︎労働としてカウントされない「自主的な活動」に言及していない改正案
現在、審議されている給特法の改正案では、残業代を支払わない代わりに基本給の4%を上乗せする「教職調整額」について、2026年1月から年1%ずつ引き上げ、2031年に10%にするとしている。
一方で、働いた時間に応じた残業代は支給されず、現行の給特法の「枠組み」が維持されたままになっている。
嶋﨑弁護士は公立学校の教員に対しても36協定を適用し、労使間のコミュニケーションによる労働時間の削減を議論していく必要性があると主張。
改正案の最大の問題点は「教員の自主的な活動が労働として扱われないこと」とし、教職調整額の引き上げについても、「問題点を残したままに、それを取り繕っている」と切り捨てた。
その上で、「労働市場は人の取り合い、残業代も支払わない業界に人が集まるわけがない」と語気を強めた。
⚫︎国による勤務実態調査の実施が明言されず…「ありえない選択」
名古屋大の内田良教授は「残業時間を減らすためには、無理矢理でもいいので(残業をしないようにする)仕掛けを作る必要がある。先生の自助努力では結局、子どものために頑張ってしまう」と強調した。
さらに、処遇改善を巡る議論の中で、文科省による教員勤務実態調査の実施が明言されていないことにも言及。
教員の労働状況について、16日に行われた参議院の文部科学委員会では、文科省の担当者が勤務実態調査ではなく、自治体の教育委員会による在校等時間の集計で把握する意向を示していた。
内田教授は「勤務実態調査は持ち帰り仕事や休憩の時間もしっかりと調べている。非常に良くできたデータ」とその価値を認める一方、「2016年、2022年とやってきたものをここで終わらせるのは何が起きているかを見えなくする。リスクの見える化を担う最大の調査を無くすのはありえない選択」と憤りを見せた。
さらに、「教員勤務実態調査を行うという言質をとるだけでも、働き方の未来は変わっていく」と持論を述べた。
⚫︎国は責任を放棄するな
岐阜県の公立高校教員の西村祐二さんは自治体が行っている出退勤報告について、「休憩時間中の労働や持ち帰り仕事の時間を把握していない」と不備を指摘し、内田教授に同調。
さらに内田教授と共同で2021年に小・中学校の教員924人を対象に行った調査を紹介。「誰が働き方改革を主導すべきか」という問いに対し、48.4%が文科省と回答したことを示した。
その上で「教員勤務実態調査の予定がないということは、教員は国に捨てられたというメッセージ」と述べ、「教員は自らの責任を放棄せずに耐えている。国も放棄せずに見直しに向かって欲しい」とうったえた。