「進研ゼミ」で知られるベネッセコーポレーションの顧客情報が大量に流出した問題で、流出ルートが明らかになってきた。東京都内の名簿業者がこの情報を手にいれ、ソフト開発会社のジャストシステムに販売していたことが報じられている。その顧客情報の件数は、230万件にのぼるという。
報道によると、名簿業者は今年春、ジャストシステムから「小学1年から中学3年の名簿がほしい」と依頼された。5月中旬、別の名簿業者から名簿を購入し、ジャストシステムに販売した。今回の流出問題を受けて、名簿業者は「ベネッセから不正に流出した名簿とは思わなかった」と釈明しているという。
個人情報保護が叫ばれる中、名簿転売の実態が明るみになったこと自体が驚きだが、今回の問題で、名簿を販売した業者の「法的責任」が問われることはないのだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。
●不正競争防止法の「不正競争」とみなされる可能性も
「名簿業者の行為が『不正競争防止法』の『不正競争』とみなされれば、ベネッセから損害賠償を請求される可能性があります」
齋藤弁護士はこのように指摘する。どのような行為が「不正競争」とみなされるのだろうか。
「今回、ベネッセは従業員以外の内部関係者が不正に情報を持ちだしたと説明しています。もし名簿業者が、その内部関係者から直接情報を入手して、使用したり、他人に提供したりした場合は、『不正競争』とみなされるでしょう」
今のところ、名簿業者は、別の名簿業者から入手したものだと主張している。
「別の名簿業者から入手したとしても、その情報が不正に入手されたものであることを知っていれば、『不正競争』とみなされます」
この点について、名簿業者は、不正に流出したものであることを知らなかったと釈明している。
「その場合でも、知らないことに『重大な過失』があった場合、『不正競争』とみなされます。つまり、容易に知ることができたのに、知らなかった場合ですね。
さらに、当初は知らなかったとしても、あとで不正に流出したものであることを知った場合、名簿を使用したり、転売すれば、『不正競争』とみなされる可能性はあるでしょう」
不正流出を知っていたのか、あるいは、容易に知ることができる状況にあったのかどうかが、ポイントになりそうだ。
そもそも名簿を販売することに問題はないのだろうか。
「不正に流出したものであるかどうかに関わらず、個人データの第三者提供を原則的に禁止する個人情報保護法23条に違反する可能性がありますね」
名簿業者には、さまざまな法的問題が潜んでいるようだ。