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刑法に定められた刑罰は「死刑」のみ・・・「外患誘致罪」ってどんな罪?
「外患誘致罪」は日本と外国が絡む犯罪だ

刑法に定められた刑罰は「死刑」のみ・・・「外患誘致罪」ってどんな罪?

犯罪をおかせば、裁判を経て、懲役や罰金などの刑罰が科されることになる。だが、究極の刑である「死刑」を宣告されるのは、まれだ。殺人事件でも、死刑判決が下されるのは、極めて悪質なケースに限られている。

しかし、人を殺したわけでもないのに、有罪が確定すると、必ず「死刑」になる罪があるのをご存知だろうか。それは、刑法81条に定められた「外患誘致罪」だ。そこには、「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する」と書かれている。

日本の刑法に規定された数多くの犯罪のうち、刑罰が死刑のみというのは、この外患誘致罪だけなのだという。この珍しい罪は、いったいどんな場合に成立することになるのか。西口竜司弁護士に聞いた。

●日本国に対する「裏切り行為」を処罰

「刑法の第3章は、『外患に関する罪』を処罰しています。これは、日本国に対して外部から武力を行使させたり、外部からの武力行使に加担するなどして、我が国の存立を脅かす行為を処罰するものです。つまり、日本国に対する裏切り行為を処罰するものです」

このように西口弁護士は説明する。外患誘致罪は、刑法第3章の「外患に関する罪」のうちの一つなのだ。どんな罪なのだろうか。条文は次のとおりだ。

「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する」(81条)

西口弁護士は、この条文のそれぞれの文言を次のように解説する。

「まず、『外国』とは、外国の政府、軍隊、外交使節などの国家機関を言います。一般の外国人や外国の私的団体などは含まれない、とされています。

また、『通謀』とは、意思の連絡を生ずることをいいます。外国政府に働きかけ武力行使をすることを勧めたり、外国政府が日本国に対して武力を行使しようとすることを知って、武力行使に有利となる情報を提供する行為をいいます」

さらに、『武力を行使させた』とは、軍事力を行使させて我が国の安全を害することをいいます。必ずしも、戦争である必要はありません。具体的には、外国政府が、安全侵害の意思をもって、公然と日本国領土に軍隊を進入させ、ミサイル攻撃等を加えることをいいます」

西口弁護士はこう説明する。

だが、「本罪で事件になった例は、過去にありません」という。外患誘致罪は、死刑しか刑罰が定められていない特殊な犯罪だが、いまのところ、その適用を受けたケースはないわけだ。

その背景について、西口弁護士は「外交に対する配慮が働いているからだ、とされています」と述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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