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「アイヌへの差別扇動」と主張、女性アーティストが「人権侵犯」被害申立て「認められなくても一歩踏み出す」
マユンキキさん(2024年3月7日/弁護士ドットコム)

「アイヌへの差別扇動」と主張、女性アーティストが「人権侵犯」被害申立て「認められなくても一歩踏み出す」

アイヌ民族への差別扇動にあたるような投稿がSNS上でされているとして、アイヌの伝統的な歌を歌う女性アーティストで、北海道在住のマユンキキさんが、人権侵犯の被害を法務局に申告した。マユンキキさんが3月7日、都内で記者会見を開いて明らかにした。

マユンキキさんは、投稿者が法務局による「任意の聴取」を受けなければ、「おそらく人権侵犯が認められることはないだろう」という見解を示した。それでも、人権侵犯の仕組みの問題を指摘するために声をあげたという。

●「ひどい罵りなくても、投稿がひどい差別を引き起こした」(マユンキキさん)

マユンキキさんによると、ことの発端は、衆院選などに立候補した元愛知県春日井市副市長の本間奈々さんの投稿だ。

本間さんは2023年11月、自身のXに、マユンキキさんの顔写真とともに「一般の人は刺青(タトゥー)を自費で彫ってますが、アイヌの場合は公費で補助しないとならないほど特殊な技術や材料が必要とされるのですか?」などと投稿した。

マユンキキさんは、この投稿をきっかけに、アイヌ民族への差別的な投稿が引用ポストなどで連なったと主張している。ほかにも、マユンキキさんの家族の名前なども明らかにした形で投稿が続いたという。

「とてもひどい言葉を使って罵っているわけではないが、影響を受けた方が、私の父や母など家族の写真をとてもひどい誹謗中傷とともにアップしていた」(マユンキキさん)

マユンキキさんは今年1月16日、本間さんのこのような投稿は「差別扇動」にあたるとして、札幌法務局に人権侵犯の被害を申告して、受理された。また、2月5日には札幌弁護士会に人権救済を申し立てた。

人権侵犯の被害については、札幌法務局から2月末に「調査することになった」と連絡があったという。

●「北海道で苦しむ人を減らしたい。認められなくても前例を作りたい」(マユンキキさん)

一方で、マユンキキさんは、法務局が人権侵犯を認めることはないだろうと考えている。

法務局は申立てを受理しても、相手方が任意の聞き取りに応じなければ、調査を実施しないのだという。

マユンキキさんを支援する佃克彦弁護士は「法務局として、相手方の言い分をきちんと聞き取れないと事実認定ができないので、相手方の協力がないと事実上、機能しない。制度自体が問題とも言える」と指摘した。

画像タイトル 佃克彦弁護士

「『二次被害があります。それでもします?』と法務局の担当者から事前に言われています。そのシステムはおかしい」(マユンキキさん)

調査開始の連絡を最後に、マユンキキさんには、それ以降の情報は法務局から得られないという。とりわけ問題としているのは、相手方に任意の聴取がおこなわれたか、聴取に応じたかどうかもわからないことだ。わかるのは、人権侵犯が認定されたかどうかの結果だけだとしている。

相手方が聴取を拒否すれば、申立人の救済は実現されない。

自民党の杉田水脈衆院議員はアイヌ民族への差別的投稿をブログなどに投稿して、札幌法務局から昨年「人権侵犯」と認定された。この際、自身に対する聴取がなかったことを杉田氏が問題視。これを受けて、法務省が法務局に双方への聴取を厳格におこなうように通知したと報じられていた。

「実際に申立てをしたことによって、システムの問題もわかった。人権侵犯の認定が通ろうが、通らなかろうが、前例を一つ作りたい。誰かが立ち上がらないと。アイヌへの誹謗中傷は本当にひどいものがある。北海道で苦しむ人を少しでも減らしたい」

マユンキキさんによる動きについて、弁護士ドットコムニュースが見解を尋ねたところ、本間さんは3月8日、「法務局からの連絡は来ておりませんので仮の質問にはお答えできません」とメールで返答した。

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