アイドルグループ「SDN48」元メンバーの光上せあらさんが3月5日に更新したブログで、病院内のカフェで子どもが店頭に並ぶサンドイッチを触り店側から買い取りを求められたことを明らかにした。
ブログには、透明の袋に包まれたサンドイッチの一部がつぶれたようになっている写真がアップされ、「子供達が触ったサンドイッチを元の位置に戻した時に形がおかしな事になっているかのチェックをせず戻しちゃった」「本当申し訳ない」と書かれている。
ブログが反響を呼ぶと、翌日にも更新。その中で「世の中子連れママに厳しすぎないか?もっと子連れママが生きやすい世の中になっておくれよおおおおお」との切実な声も投稿した。これに対して、共感の声もある一方で、乳幼児の子育ての苦労をねぎらいつつも、販売側は側の立場にたって「買取は当たり前」と諭す声もあった。
このように買い物に行った店で子どもが購入前の商品に触った場合、保護者は買い取る義務があるのか。池田誠弁護士に聞いた。
●壊した場合は「商品相当額を賠償する義務がある」
子どもが商品を触って壊すなどしてしまった場合、一般的には、買い取る義務というより、親が店に対して商品代金相当額の損害を賠償する義務があると考えられます。
民法では、行為の責任を弁識(理解)するに足りる能力を備えていない未成年者が他人に損害を与えた場合、その未成年者に代わって監督義務者が損害を賠償する義務があるとされています。
ここでいう未成年者は、裁判例上、おおよそ12歳が一般的な目安とされています。
したがって、11歳以下の子どもが商品を触って壊してしまった場合は、その子ども自身は商品代金相当額の損害を賠償する義務を負担しません。その代わりに、監督義務者である親が賠償義務を負担することになると考えられます。
仮に、その子どもが12歳以上で前述の能力を備えた未成年者であった場合、子ども自身もすでに民事上の責任無能力者ではありませんから、商品代金相当額の損害を賠償する義務を負担すると考えられます。
また同時に親も、子どものそのような行為を予想でき、結果を回避できるはずだったのに怠った場合には、商品代金相当額の損害を連帯して賠償する義務を負います。
●トラブル防止のために「店も買い取りを請求できる体制を」
今回のケースでは「サンドイッチを触っただけ」とされている一方、サンドイッチの一部がつぶれたようになっていたとのことです。
商品を購入しようとして手に取ることは想定され得る事態なので、その過程で当然に生じ得る変形の程度であれば、商品価値を損なったとまでは言えず、損害賠償義務を負わないと考えます。
一方、その程度を超える変形を生じたり、いたずらなどの目的で商品をあえて手にとって生じさせた変形だとしたら、他の消費者からすると購入意欲を削がれるものだと思いますので、商品価値が損なわれたと評価できると思います。
なお、今回のケースではクローズアップされていませんが、本来は、その変形が誰によって生じたのかも問題となります。そして、これを証明するのは店舗側の責任です。
こういったトラブルは、双方にとって気持ちの良いものではありませんので、トラブルを避ける上では、当然のことながら、保護者側で子どもに安易に商品に触れさせないように管理することが大切ですが、店舗側も、「商品をお手に取るのはご遠慮ください。万が一、商品をお手に取られた場合にはお買い上げいただきます。」など、店舗内の分かりやすいところに明示するなどして、契約上の義務として買取を請求できる体制を整えておく方が良いと思います。